創刊100年を誇る米老舗専門誌ザ・リング選定のパウンド・フォー・パウンド(階級超越した最強選手)2位にいる井上尚弥(30)と、MLBドジャースに移籍した大谷翔平投手(29)。それぞれのプロ競技で世界に名をとどろかせる両者には意外な「縁」と「接点」がある。井上が所属する大橋ジム大橋秀行会長(58)は怪物2人の“関係性”を明かした。
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井上は「スペシャルな世界王者になるにはどうしたらいいか」と数年先を描く未来像を頭で逆算し、練習に取り組む意識が常にある。「ジムワークは1日2~3時間。いかに考えて濃くするか、常に考えている。遠い目標をセットすれば、2~3時間で考える差が1年後、2年後に大きく出る。漠然とやる人と考えながらやる人の3~5年後はとてつもない差になる。目先ではなく、どうなりたいか。どういう練習が必要なのかを積み重ねる」。
大谷が花巻東高時代に作っていた目標達成シート「大谷ノート」は有名だ。マス目の中央に最大目標を記し、それを達成するため、必要な行動と要素を細かく、具体的に整理するチャートだ。アスリートとしてのメンタル強化、気持ちを整える方法だが、井上の未来像から逆算する考え方と類似点がある。
この両者の思考の「源流」には、大橋会長の存在がある。同会長によると、親交の深いイメージトレーニング指導者の主催イベントに出席し、メンタル強化の講演を行った。その受講者の1人に花巻東OBで、当時は西武に在籍していた現MLBブルージェイズ菊池雄星投手が受講していた。同会長は「私の講義を契機に菊池選手がそのイメトレ教材を自費で購入し、花巻東に贈ったそう。その当時、野球部に在籍していたのが大谷投手なのです」と明かす。
大橋会長は「井上の精神力は最強」と称し、個別にメンタル強化の指導はしていないという。それでも同会長は「時あるごとに私が話していることを耳にし、行動している姿を(井上が)見て聞いて実践してくれているのが分かる。アスリートとして(井上と大谷の)メンタルがどこか似通っているのもうなずける」と明かす。
両者には交流がある。18年12月の日本プロスポーツ大賞の授賞式で初めて対面。エンゼルス1年目の大谷が大賞、世界3階級制覇した井上が殊勲賞を贈られた。井上と日本ハム時代の大谷は芸能マネジメント事務所が一緒で、マネジャーも同一人物。19年1月には東京・品川区の鉄板焼き店で、水原一平通訳、井上のマネジャーを交えた4人で食事会を開いた。井上が19年5月、エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)戦で2回TKO勝ちし、WBA、IBF世界バンタム級王者となった際、大谷から祝福メッセージも受け取っている関係性もある。
大橋会長は20年、大谷の実姉の結婚式に元世界3階級制覇王者八重樫東トレーナー(40)と出席した。この結婚式で、同会長には忘れられない思い出がある。「大谷選手から『先日、空港で井上さんと会いましたよ』と言われたのですが、その声と話し方が尚弥そっくりでした。初対面だった八重樫も『会うのは初めてではないですよね』と言うほどだった。本当に、どこか似ている」と感慨深く振り返った。
タパレス戦前、井上は大谷の存在を問われ「常にニュースから(大谷の)活躍を見るたびに刺激を受ける。ただジャンルは違いますし、僕はボクシングで頂点を極め、さらに上に行けたらと思います。すごく良い刺激を受けています」と口にした。両者が織りなす不思議な「縁」と「接点」をみれば、それぞれのプロ競技で世界から注目される存在になっている理由も納得できる。【藤中栄二】

