大相撲の元幕内で西三段目40枚目の土佐豊(30=時津風)が初場所13日目の22日、現役を引退した。今後は年寄「安治川」を襲名し、後進の指導にあたる。

 土佐豊は東農大から入門し、07年春場所に初土俵を踏んだ。序二段から幕下まで3場所連続で各段優勝し、幕下付け出しを除き、昭和以降史上最速タイの所要6場所で新十両に昇進。十両以下の連勝記録(30連勝)も保持している。09年名古屋場所で新入幕を果たし、前頭筆頭まで上り詰めた。

 だが、左膝に大けがを負い、2度の手術を経験。一時は西三段目84枚目まで落ちた。昨年初場所で「戦後もっとも低い地位」からの再入幕を果たしたが、初日に今度は右膝に大けがを負う不運に見舞われていた。昨夏に両膝を手術し、今場所は3場所ぶりに復帰を果たしたが、2勝4敗で負け越しが決まっていた。

 この日、両国国技館内で師匠の時津風親方(42=元前頭時津海)とともに記者会見。いちばん思い出に残る相撲に、最高位の東前頭筆頭で迎えた11年名古屋場所3日目の大関琴欧洲(現鳴戸親方)戦を挙げた。寄り倒されて最初に膝を負傷した一番で「1年ぐらいは夢に“ポキッ”という音とともに出てきた」と言う。うれしい一番も相手は琴欧洲で、10年春場所8日目に大関初挑戦で押し倒した相撲を挙げた。30歳という若くしての引退だが「あきらめない力士を育てたい」と抱負を語った。