次代の主役は俺だ! 西前頭2枚目の北勝富士(24=八角)が、横綱鶴竜を押し出しで破り、初金星を挙げた。所要15場所目は年6場所制となった1958年以降で2位タイのスピード記録で、日本出身力士では最速となった。横綱初挑戦での初金星は14年秋場所の逸ノ城以来。同期の関脇御嶽海、平幕宇良の活躍に隠れていたが、一気に注目を集める存在になってきた。

 勝ち名乗りを受けるとき、座布団が1枚足元に落ちてきた。それは大番狂わせが起こった証しだった。北勝富士は土俵下で思わず涙をこぼした。支度部屋に戻っても時折、左目から光るものが流れ落ちた。「横綱戦を夢見てたので。久しぶりにうれし泣きしました」と照れ笑いを浮かべた。

 横綱の当たりにもひるまなかった。低く低く、突き押した。「前みつを取らせないのと引かせることでしか勝機がない」。鶴竜が嫌って後ろに引いたところを押し出した。狙い通りにも「がむしゃらだったので覚えてないです。早く帰って(相撲を)見直したい」と興奮は冷めなかった。

 地道に続けてきたことが実を結んだ。小学4年から地元の埼玉・所沢の相撲クラブに入った。徹底して言われてきたのは、前みつを取って低く拝むように押す相撲。その教えは今も変わらない。「まわしを取るなと言われている」と師匠の八角親方(元横綱北勝海)から指導があり「低く前みつを取る相撲。体に染みついてます」。ぶれずにやってきたことを横綱初挑戦の一番でも発揮。2位タイのスピード金星を獲得した。