かど番の西大関豪栄道(31=境川)が1敗を守り、トップに並んだ。全勝で初顔合わせの東前頭3枚目阿武咲の勢いを受け止め、押し出した。1918年(大7)夏場所以来99年ぶりの3横綱2大関休場という異常事態の中、意地を見せた。

 阿武咲に押され、じりじり下がりながらも豪栄道は冷静だった。機を見て左に回り、はたき、体勢を崩させ、狙い澄まして押し出した。「いい当たりやね。芯の入った当たり。ドシッとしてる。巡業でも(阿武咲は)よく稽古してるからね。(自分は)よく見えてたけど、いい当たりだったね」。初顔合わせ。ただ1人全勝で勢いづく21歳の新星を、31歳は肌で感じ、退け、トップに並んだ。

 10年前の07年秋場所。21歳だった自分に、阿武咲がかぶる。新入幕ながら西前頭14枚目で10勝1敗。快進撃を見せ、12日目から当時小結の日馬富士、同大関千代大海、横綱白鵬と三役以上と初顔合わせをした。

 「ちっちゃいときからテレビで見ていた人と当たって、自分もこんなところまで来たんだなと思った。やっぱり見ているより、当たった横綱、大関の人は雰囲気があったっすね」。結果は3連敗。それがあるから、今がある。

 照ノ富士の休場も決まり、約1世紀ぶりに3横綱2大関が場所から消えた。豪栄道が横綱日馬富士に次ぐ立場になった。かど番なんて言ってる場合じゃない。「それは意識せず、自分のやれることをしっかりやりたい。内容はそこまで完璧じゃないけど、落ち着いて相手が見えてるんで、そこはいい。集中してやれば、結果はついてくる」。大関の威厳は言葉でなく、土俵で見せる。【加藤裕一】