横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)が、16年名古屋場所以来、7場所ぶり9度目の優勝を飾った。本割で大関豪栄道を寄り切って11勝4敗で並び、優勝決定戦でも寄り切った。

 日馬富士の優勝インタビューの音声が流れる支度部屋で、豪栄道ははっきり言った。「横綱が上でした。完敗です」。本割は両まわしを取られ、力で寄り切られた。優勝決定戦は瞬時に懐に入られ、なすすべなく土俵を割った。何もできなかった。

 昨年秋場所の涙の全勝初Vから1年。九州で初の綱とりに失敗、今年の春場所は右足関節外側靱帯(じんたい)損傷で途中休場した。復活へ、原点に戻った。巡業のない6月、毎週水曜日は母校・埼玉栄高に出向いた。トラックタイヤを2本つなげて100キロ、3本つなげて150キロにしたゴムのかたまりを土俵で押し込んだ。名古屋場所直後の7月末、大阪市で母真弓さん(61)と焼き肉を食べながら「どっか、痛いの?」と聞かれて「そら全身痛いよ」と笑った。31歳の体にむち打ち、休場から半年で戦える体を作った。

 相撲を始め、ずっと目指す日本一の夢。大関では満足しない。横綱を目指し続ける。「いつか、この経験があったから…と言える相撲人生にしたい」。屈辱の逆転負けを胸に刻み、再出発を誓った。【加藤裕一】

 ◆豪栄道の来場所綱とりについて否定的な二所ノ関審判部長(元大関若嶋津)の話 2番とも相撲にならなかった。印象が悪いね。13勝と12勝の優勝でも違うし(それが)11勝(の優勝同点)ではね。まして横綱3人が休んでいる。今日の2番は痛い。