元横綱日馬富士関から暴行を受けた平幕貴ノ岩(27=貴乃花)が、危機管理委員会の聴取を受けていたことが明らかになった。20日に報告された調査結果には貴ノ岩の心情が盛り込まれ、状態も明かされた。

 それまで聴取拒否だった事態が急転したのは前日19日。師匠の貴乃花親方から「検察の調べも終わり、検事から『調査に応じても差し支えない』と言われた」と説明された。それを受けて高野委員長らが同日午後7時から、関東近郊の病院に5日から入院している貴ノ岩の元を訪問。約2時間、聴取した。同委員長は貴ノ岩の様子について「回復に向かっていることは間違いないと思います。ただし、稽古をしていないので体力は落ちている。体重も減っているということを言っていた」と明かした。

 白鵬の説教中に貴ノ岩がスマートフォンを操作したことが、日馬富士による暴行の引き金だった。ただ、調査結果によると貴ノ岩は「説教が一段落したと思ったのでLINEの返事をしたので、無礼なことをしたとは考えてなく、日馬富士がどうしてこんな仕打ちをするのか理解できなかった」という。さらに「その場にいた者がもっと早く制止してくれればいいのに、なぜ誰も止めてくれないのか」との心境がつづられた。

 暴行翌日に、支度部屋で日馬富士と和解の握手を交わす場面が目撃された。これは「地元高校関係者の助言によるものであり、本人が納得した上でのものではなかった」という。当初は貴乃花親方に「酒を飲んで階段から落ちた」とうそをついたが「騒ぎを大きくしたくなく、また告げ口をすることが男らしくないと思った」ことが理由だった。

 ほかの力士や高校関係者の前で一方的に暴行を受けたため「恥ずかしかった」とも述懐。ただ、日馬富士の引退には「それを望んでいたわけではなかった」という話もしているという。

 鏡山危機管理部長は「貴ノ岩は一方的な暴力を受けた被害者。協会全体として守るべき力士」と説明。十両に陥落する来年1月の初場所を全休しても、診断書を提出すれば、3月の春場所は十両の最下位にとどめる救済措置を取るとした。

 ◆特例番付 07年6月に起きた時津風部屋の序ノ口力士死亡問題で、暴行に関与したとされる兄弟子3人の番付が据え置かれた。愛知県警の捜査による心労を理由に07年九州場所から連続全休したが、翌08年春場所の番付は、前の初場所の番付のまま据え置き。警察の捜査に協力している点が考慮された。貴ノ岩の初場所番付は十両7枚目前後の見込み。初場所全休でも翌春場所は救済措置を取られるが「十両最下位(=14枚目)にとどめる」(鏡山理事)としており前例の“完全救済”とはならない。

 鏡山危機管理部長(元関脇多賀竜) 貴ノ岩は現在入院中で、暴力被害の後遺症がある。一方的な被害者なので、理事会では協会全体として守るべき力士だと確認した。