大相撲の春巡業が6日、宝塚市で行われ、土俵上からのあいさつを要望し、主催者側に拒否された宝塚市の中川智子市長(70)が土俵下のあいさつで「女性であるという理由で、市長でありながら土俵の上であいさつできないのは、悔しいです。つらいです」などと訴えた。同市長は昨年4月の巡業では「女性だけの宝塚歌劇団のある街に男性だけの大相撲が来てくださった」などとあいさつしたが、それも土俵下だった。

 この日は「私は相撲がちっちゃな頃から大好きで、見てきました」とした上で「日本相撲協会は伝統を大事にして、国技である相撲を守ってこられた。でも、伝統も大事ですが、変革する勇気も大事ではないでしょうか? 時代はどんどん変わり、女性の知事、市長も増えて、総理大臣が現れるかもしれない。その時に女性は絶対土俵に上がってはいけないんでしょうか?」となどと訴えた。場内からは拍手が起こったが、一方で「いけない!」という男性のヤジも飛んだ。

 同市長はあいさつ後、市役所で会見を行い、自分の真意を説明した。土俵の女人禁制については、かつての太田房江・大阪府知事が春場所の優勝力士に対する大阪府知事賞の贈呈を巡り、土俵で自ら申し出ながら断られた“歴史”もある。それについて「知っています。その時もおかしいと思った」と話した。だが、昨年の宝塚巡業時は、土俵をさして意識せず「男女ともあの場所(土俵下)でやっているものだと思い込んでいた」と言い、4日の舞鶴巡業の「女性は土俵から下りて」というアナウンスが流れた件で「ショックでした。けがれを払うように塩をたくさんまいた。女性として侮辱されたような気がしました」と問題を再認識し、5日に巡業の主催者に土俵上であいさつできるよう要請したが、断られたという。「(女性が土俵に上がれないのは)時代にそぐわない。女性が黙っているべきではない。それが私の実感で発信した」と語った。

 同市長は来年の宝塚巡業開催に意欲的で「土俵上でも下でもいいので(男性と)平等に扱ってほしい。女性だから土俵に上げないというのは差別。議論してほしい。そしてその経過をつまびらかにしてほしい」と語り、議論を要望する文書を作成、近く日本相撲協会に提出する意向を示した。

 日本相撲協会の春日野巡業部長(元関脇栃乃和歌)はこの日、同市長のあいさつを前に「女性を蔑視しているわけではない。歴代の方々がやってきたことを守っています」と、土俵上のあいさつを断った理由を説明していた。