関脇経験者で西幕下7枚目の豊ノ島(35=時津風)が、今場所の一番相撲に登場。幕内経験者同士の対戦で、東幕下7枚目の磋牙司(36=入間川)を突き出しで破り白星発進した。

 立ち合いから左をのぞかそうと前進。つかまえきれないと見るや、適度に距離を置く相手を突き放して攻勢に出た。相手のいなしにも足を運び、反時計回りに回り込もうとする相手を常に正面に置く。最後まで自分の間合いを保ったまま突いて出る快勝だった。

 幕内優勝争いを何度か経験した豊ノ島でも、初日は常に緊張に襲われるという。ご多分に漏れず、この日も同じで「すごい緊張で足に全然、力が入らない感じだった」と話すが、そこは体が相撲を覚えていた。いなし、はたきなど引き技のうまい相手に対し「勝手に手が伸びて攻めていた。突くつもりはなかったけど、最悪、負けても攻めての負けなら悔いは残らないから」と攻めの姿勢を貫いた。

 6月中旬、部屋の沖縄・宮古島合宿の稽古で左肩を痛め「ぶっつけ本番。痛いまま場所を迎える覚悟だった」という。ところが「うそだろう、と自分でも思うぐらい2日前から良くなった」と好転した。不安要素はなくなり、7戦全勝でつかめる再十両切符に「マジック6。一発でね」と意欲を隠さなかった。

 2年前の名古屋場所前の稽古で左アキレス腱(けん)を痛めたのが、幕下陥落への要因だった。番付が幕下に落ちた2年前の11月から無給。「もう2年たった。2年も家族に無給の生活をさせている。もういいかげんに結果を残さないとね」。柔和な表情の裏に、胸に秘めた覚悟がある。