34歳2カ月の関脇玉鷲が前頭9枚目遠藤(28=追手風)を突き落としで下し、13勝2敗でうれしい初優勝を飾った。

初優勝の年齢としては、12年5月の夏場所を制した旭天鵬(現在の友綱親方)の37歳8カ月に次ぐ、歴代2番目の年長となる。04年1月の初場所で初土俵を踏んで以降、所要90場所目での初優勝は史上4番目の遅さ。元横綱稀勢の里の89場所を上回るスロー記録となった。13勝目も6日目からの10連勝も、ともに自己記録を更新した。

前日14日目の碧山戦は「一瞬、頭が真っ白になった」と、いつもの仕切りのやり方が分からなくなるほど緊張した。14度目の対戦で初白星を挙げた、12日目の横綱白鵬戦も取組後は緊張のピークだと感じていたが、優勝が現実味を帯びてきたことで、それを上回る緊張に襲われていた。遠藤戦は、勝てば自力で初優勝をつかむことができる新境地だったが、執念で勝った。

スポーツ歴がないまま、東大大学院に通っていた姉を頼って初来日。偶然、自転車に乗った力士を見つけてついていくと、井筒部屋に着いた。そこで現在は横綱の鶴竜に出会い、入門方法などを聞いた変わり種だ。手先は器用で絵画やスイーツ作りが得意。師匠の片男波親方(元関脇玉春日)は「正月に奥さんと一緒に生クリームたっぷりのホールケーキを作ってきてくれたけど、お店に置いてありそうな感じだった」と、味も見た目もハイレベルだったという。

かつてはホテルマンを夢見た男が、相撲界の頂点に立った。関脇に返り咲いた今場所前も「もう一つ上を狙いたい」と、大関昇進への色気も隠さない。34歳になってもなお、成長を続ける異色の力士が、今年最初の本場所を制した。