大相撲の横綱白鵬(34=宮城野)が1日、富山市で行われた巡業の朝稽古で、同市出身の前頭朝乃山に胸を出した。

関取衆によるグループごとの申し合いがすべて終了後、ぶつかり稽古で約5分間、稽古をつけた。今回の巡業では、7月28日の初日から琴ノ若、一山本と2日連続で、7月の名古屋場所が新十両だった若手に胸を出し、前日7月31日には同場所で金星と殊勲賞を初めて獲得した前頭友風を指名。連日、巡業の盛り上げ役となっている。

白鵬は稽古後、朝乃山を指名した理由について「5月(夏場所)に優勝していますからね。特に富山は、応援したいと思っても、簡単に行くことはできない。見に行きたいファンが多い中で、いい稽古ができた。稽古しているから(朝乃山が)強くなって優勝できた。それを地元の方に理解していただけたのではないかな」と語った。この日の厳しい稽古を通じて、朝乃山の日々の努力を少しでも理解してもらいたいという、先輩力士としての心遣いだった。

この日、直接指導することは、付け人を通じて前日に伝えていたという。白鵬は「準備してもらいたい、というのがあったから。地元に帰ってきたら、付き合いとかもあるかもしれないけど、いいものを見せられないかもしれないからね。最初に言っておけば、抑えながら過ごすこともできる」と説明した。

巡業は朝から午後3時ごろまで行われ、それが何日間も続く。そのため、巡業が終わるたびに、次の開催地へと移動する。この日の富山市にも、前日7月31日の福井・越前市での巡業後に移動して入った。地元に入れば、後援会関係者らとの付き合いなどがあるのが定番。白鵬は、それが大事だということも理解しつつ、巡業を観戦に来る多くのファンに良いパフォーマンスを見せるため、自制を求めた事前の通知だったと説明した。

朝乃山とは、7月の名古屋場所前に三番稽古を行っている。白鵬のもとへ出稽古に来る力士は珍しく「なかなか意識が高い」と、すでに認めている実力以上に、精神面の強さを高く評価した。

今後も若手、中堅に稽古をつけていく意向で「この巡業は、そういうテーマだね。引っ張ってあげて、たたき上げていきたい」と語った。2日は長野・松本市で開催。長野県出身の関脇御嶽海に稽古をつけるか問われると「さあね」と話し、不敵に笑っていた。