連敗スタートで苦しい土俵が続いていた、現役関取最年長で東十両11枚目の豊ノ島(36=時津風)が、今場所初の連勝で星を3勝4敗と盛り返した。同時に現役4位の通算700勝目という節目の記念星でもあった。

相手は史上4位のスロー記録となる、30場所ぶりの十両復帰を果たした西14枚目の魁(33=芝田山)。アキレス腱(けん)断裂で12年半ぶりに幕下へ陥落し、再起をかけた16年九州場所の6番相撲で勝ち越しを決めた相手でもあった。そんな感傷に浸る余裕はない。めまぐるしい攻防の末、勝った相撲も「必死」の2文字を何か口にして振り返った。

踏み込んで得意の左は入った。もろ差し狙いで右を巻き替えようとしたが、腰が浮いたところを攻められ左半身の体勢に。さらに右からの上手投げで一瞬、背後をつかれるピンチを招き、東土俵に詰め寄られた。ただ、ここからの反応が良かった。スパッと入った右のかいなを返しながら、左の上手をつかみ体を入れ替えた。右四つの体勢で寄り、さらに左から外掛けで崩し、最後は左の下手を結び目まで深くつかみこん身の力を振り絞って寄り切った。

勝っても反省の弁が多かった前日までとは違い、力を出し切った充実感と、動きの良さを認識してか前向きな言葉が並んだ。「相撲に流れがあった。だんだん良くなってきてる。外掛けも高めだったけど(相手の)投げでかけた、あのあたりは反応がいい。もたつきはあるしスムーズさはないけど一生懸命、取ってる」とVTRを回すように振り返り「この連勝は大きい。気持ちが乗る」と喜んだ。

記録は知らなかったようで、通算700勝を聞かされると自分を祝福するように胸の前で拍手した。弟弟子の正代、豊山が序盤ながら幕内優勝争いに参戦中。「意識するのは早いけど、意識してやってほしい。意識しないと優勝なんて出来ない。かと言って勝ち急ぐのではなく1日1番、2人で盛り上げてほしい」とエールを送っていた。