西前頭4枚目の正代(28=時津風)が連日の「ヒヤリ」相撲で1敗を守った。立ち遅れて小結阿炎に押し込まれながら土俵際、逆転の突き落としで残った。幕尻の徳勝龍も11勝目で、12日目を終えて平幕2人がトップ並走は史上初。目覚めた大器が、勝負の残り3日に挑む。かど番の大関豪栄道が負け越し、14年秋場所の昇進から33場所守った地位から関脇への転落が決まった。

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阿炎の強烈な突きに正代の体はイナバウアー級にのけぞった。「悪いところが出た相撲」と言うが、最後まで勝負をあきらめない。土俵際、踏ん張って逆転の突き落とし。「押し込まれたが、あせってはいなかった。昨日も失敗で悪いイメージが残っていた」。前日11日目も押し込まれながらの逆転劇。勝負強い。

幕尻の徳勝龍と12日目を終えてもトップを譲らない史上初の事態。正代は優勝争いについて「初めてなんで何とも言えない。意識はあまり出てこない」と言いつつ、「硬くなりつつある感じはある」。朝の稽古後は「(優勝は)なんだかんだいって大関じゃないですか。収まるところに収まると思う」とひとごとのように話していたが、徐々に変化の兆しは表れてきた。

東農大2年時に学生横綱になった大器は、新入幕から所要6場所で関脇に駆け上がり、そこから伸び悩んだ。「勝ちたいというか関取として残りたい気持ちが強くて、勝ち越すまで緊張していた」という。それが今は「だいぶ気楽にとれている。思い切り場所を楽しんで結果がついてくれば」と話す。朝乃山、御嶽海ら「学士力士」の後輩が先に優勝したのも、自分を見つめ直す契機になった。

勝負の残り3日に夢がかかる。正代は「1日が過ぎるのが早くて、トータル(15日間)がすごく長い。こういう経験は初めて。優勝したいはしたいですけど、変に熱くなるのは自分らしくないなと」。場所を楽しんだ先に賜杯が見える。【実藤健一】