東前頭9枚目隆の勝(25=千賀ノ浦)が新風を巻き起こす! 玉鷲を押し出して1敗を守り、関取としては自己最速の勝ち越しを決めた。無観客開催の中、同部屋の大関貴景勝と稽古を重ね、実力を伸ばしている押し相撲のホープが無欲に突き進む。横綱白鵬が無傷の9連勝。隆の勝と碧山の平幕2人が1差で追い、横綱鶴竜ら2敗の5人が食らいつく。

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隆の勝が押し相撲の実力者を難なく退けた。立ち合い当たって右を差すと、すくって玉鷲の体勢を崩し、最後ははず押し。自己最高位の場所ながら、自己最速で給金を直した。「うれしい。勝ち越しのかかった相撲は緊張するけど、今日は周りが見えていた」。ファンから“おにぎり君”の愛称で親しまれる、癒やし系の笑顔を咲かせた。

力をつける環境が整っている。旧貴乃花部屋の力士らが千賀ノ浦部屋に移籍して約1年半。タイプの違う関取衆と手合わせする機会が増えた。特に貴景勝は同じ押し相撲。「場所前に大関(貴景勝)と相撲を取ることが大事。大関はストイックで頭がいいし、立ち合いの強さ、ぶれない下半身は見習いたい」と強調する。貴景勝から戦略面の助言もしばしばあり、この日の朝も「先に攻めた方がいい。無理やり(右を)入れてもいい」と声をかけられた。実際に右を差してから主導権を握る展開。大関の言葉を白星につなげた。

異例の無観客開催だが、図らずも好結果につながっている。「最初は寂しかったけど、慣れてくれば稽古場に似ている」と隆の勝。師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)も「稽古場で強い。無観客でプレッシャーが薄れてるかも」と好調の要因を推察した。

1月の新年会では、師匠に口頭で「年内での三役昇進」を決意した。「同年代が先に上がって負けてられない」。素質を開花させつつある中卒たたき上げの25歳が、主役候補に躍り出てきた。【佐藤礼征】

〈隆の勝(たかのしょう)〉

◆本名 石井伸明(いしい・のぶあき)

◆あだ名 ノブ。おにぎり君。

◆生まれ 1994年(平6年)11月14日、千葉県柏市。

◆家族 両親と兄、姉2人、妹、弟の6人きょうだい、8人家族。

◆相撲歴 小3から柏市相撲スポーツ少年団で相撲を始め、小4~小6までわんぱく相撲全国大会出場。

◆角界入り 先代千賀ノ浦親方で現常盤山親方(元関脇舛田山)からの誘いを受け、中卒で入門。10年春場所で初土俵。17年九州場所で新十両、18年秋場所で新入幕。

◆しこ名 新十両を機に、現師匠の現役時代のしこ名から1字取って「舛の勝」から改名。

◆サイズ 183センチ、163キロ。