脱・ネガティブで初賜杯を狙う。関脇正代(28=時津風)が、平幕の栃ノ心を下して5勝目を挙げた。

これまでネガティブ発言が多かったが、今場所は前向きなポジティブ発言を連発。昨年九州場所と今年の初場所で2場所連続優勝次点になり、7月場所では優勝争いに加わるなどし自信をつけている。横綱不在の場所で、存在感を発揮しつるある。勝ちっ放しだった平幕の阿武咲が負けて、全勝力士が消えた。

   ◇   ◇   ◇

正代はオンラインでの報道陣の質問に、頭を悩ませる様子もなく、明るい声で答えた。「好調ですし、体もよく動いている。よく攻められていると思う」。語尾まではっきり言い切ると、さっそうと会場を後にした。これまでは勝っても「何でかな…」などと言うことが多く、発言もネガティブだった。だが、今場所は一味違うようだ。

馬力のある栃ノ心に、立ち合いは正面からぶつかった。もろ差し狙いも引かれて捕まえられなかったが、すぐに体を寄せてもろ差しに。相手の引く勢いも利用して、一気に寄り切った。大関経験者を圧倒し「引きにも反応できて足が出た。立ち合いで圧力がかかっているから自分の相撲が取れている」と堂々とした口調で勝因を自己分析した。

ネガティブ発言が注目されてきた。15年名古屋場所後の新十両会見。「できればみんな当たりたくない」「対戦を想像すると緊張する。飯も食えない」などと発言して話題になった。その後も、ことあるごとに後ろ向きな発言を連発。しかし、今場所前には「優勝したい。結果を残したい」と賜杯を意識して前向きに言った。昨年九州場所と今年の初場所での優勝次点が転機となり「緊張との接し方も分かってきた」と自信をのぞかせる。

東農大では学生横綱に輝くなど、実力は十分ある。3場所連続で関脇を務めるなど安定感も増してきた。危なげない相撲が続いていて「今のところ、疲れは感じてない。このまま最後までいければいい」と前向きだ。ネガティブ発言とそんな自分を脱ぎ捨てて、横綱不在の好機を逃さず、初賜杯を狙う。【佐々木隆史】