高安の攻めの相撲に圧力があった。かち上げや体当たりではなかったが、腰が決まっているから立ち合いの踏み込みがいい。あの元気な明生もズルズル下がるばかりだった。回り込む相手を最後まで冷静にさばいて、腰が浮いたところで押し倒した。

大関経験者だから序盤は勝っても驚かないが、目前で優勝を逃した先場所のことがある。手放しでは喜べないだろうし、2日目は少しバタバタした相撲を取ったが、ここまで3日間は無難に取っている。先場所、終盤で崩れたのは優勝経験がない精神面のもろさが出たと思う。どんな状況でも自分の相撲を取りきることが、いかに大事かと思い知ったはずだ。いい経験をさせてもらった、苦い経験を土俵に生かそうと切り替えて今場所に臨んでいればいい。1日で15番を取るわけではない。一番一番の積み重ねを自分に言い聞かせればおのずと結果は出る。(元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)