大関に復帰した照ノ富士(29=伊勢ケ浜)の勢いが止まりそうにない。東前頭4枚目霧馬山を万全の形で寄り切り、初日から10連勝。取組を見守った日本相撲協会トップの八角理事長(元横綱北勝海)も手放しで称賛する、会心の内容だった。後続との差は変わらず2差。2場所連続4度目の優勝へまっしぐらだ。2敗勢は5人から2人に減少し、大関貴景勝、平幕の遠藤が食らいついている。

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まわしをがっちり引いても、勝負を焦らない。照ノ富士は左四つに組み止めて右上手を引くと、出し投げで霧馬山を横向きにさせた。間髪入れずに、左のど輪で起こして体を寄せる。強引に寄り立てることも、投げを打つこともない。相手の下手を切って万全を期した。

不安要素の見当たらない相撲内容に、八角理事長も目を見張る。左四つの霧馬山は、右四つの照ノ富士とはケンカ四つ。「霧馬山がやりたかったことをやった。相手のまわしを切りながらうまく取った。相手の力を出させない理論相撲。厳しい相撲を取った」とうなった。

前日9日目は合い口の悪い関脇高安に苦戦したが、それ以外の9勝は危なげない白星だ。八角理事長は「勢いを考えると、全勝も見えてくるんじゃないかな。誰が止められるか、見当たらないくらい。完璧なくらい完璧」と絶賛。3大関との対戦は残っているが、早くも全勝優勝を予感した。懸念材料は古傷の両膝だけ。疲労が心配される残り5日間だが、八角理事長は「膝、体の疲れ、勝っていると感じないもんだよね」と、波に乗る照ノ富士の心中を察した。

照ノ富士自身も、言葉に力強さがにじむ。「常に自信を持って土俵に上がらないといけないので」。初日からの連勝は、大関2場所目だった15年秋場所の11連勝が幕内では自己最長。23歳で大関を射止めた過去の自分を超える勢いがある。

前日と変わらず後続とは2差つけている。11日目に対戦する妙義龍とは過去12勝3敗。昨年の幕内復帰後は3戦3勝と問題にしていないが「まだ5日間あるので(優勝争いは)何とも思っていない」。大関復帰場所で優勝を果たせば昭和以降では初めて。快挙は確実に近づいている。【佐藤礼征】

▽幕内後半戦の高田川審判長(元関脇安芸乃島) 貴景勝は当たりが良かった。最高の角度の攻め。照ノ富士は立ち合いでまわしを取って、そこから1度腰を下ろした。ああなると逆転は食わない。