番付上で初めて一人横綱になった照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、新小結の霧馬山をねじ伏せて白星発進した。攻めあぐねる場面もあったが、じっくり左でまわしを取って、最後は小股すくいで下した。先場所限りで同じモンゴル出身の白鵬(現間垣親方)が引退。花道の警備で先輩横綱が見守る中で“後継者”指名に応える1勝を挙げた。2年ぶり開催となった九州での1年納めの場所で、2場所連続6度目の優勝を目指す。

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最強横綱の視線の先で、一人横綱の照ノ富士が力強く滑り出した。霧馬山から簡単にまわしを奪えない展開だったが、慌てずどっしり構える。「相撲って思い通りいかないものだから、その中で白星ひとつでも多く重ねていければいい」。相手のもろ差しを左四つに巻き替え、28・9秒かけて辛抱強く圧力をかけた。

番付上で初めて一人横綱となった最初の一番は、本場所初勤務の間垣親方も見つめていた。9月の引退会見で「後を託せる」と照ノ富士を“後継者”指名。この日、同親方は幕内後半戦から西の花道の警備を務めており「多少時間かけて相撲取ったと思いますけど、最後は力で勝負つけたという感じ」と取組を好評価。「一つ一つ経験していけば流れに乗っていける」とエールをもらった。

照ノ富士自身も、間垣親方のバトンを確かに受け取った。通算45回の優勝回数を誇る大横綱が引退した直後の場所。今月1日の番付発表会見では「自分が背負ってやらないといけないことが多いと思う」と意思を受け継ぐ覚悟を示した。19年以来2年ぶりの九州場所。「九州の皆さんの前でいい相撲を取りたい」。看板力士としての責任を果たすつもりだ。

年6場所制が定着した1958年以降、新横綱場所からの連覇を果たせば、62年初場所の大鵬以来2人目で59年ぶり。危なげなく発進した29歳は「土俵の上に上がったら一生懸命やるだけ」。自然体で快挙に挑む。【佐藤礼征】