6場所出場停止処分明けの大相撲7月の名古屋場所三段目全勝優勝を果たした朝乃山(28=高砂)が23日、所属する高砂部屋の朝稽古後に取材に応じ、地元富山への思いについて「(今は)帰れる度胸はないです」と複雑な胸の内を明かした。「上にいた時から地元の声援が力になっていた。戦っている姿を見てもらって、もう一度応援してもらえるように認められるようになってから帰りたい」と話した。

この日出稽古に訪れた宮城野部屋の十両炎鵬や北青鵬、鳴戸部屋の欧勝馬らと申し合い稽古を行い、15勝4敗。炎鵬には苦戦したが、北青鵬や欧勝馬は圧倒して大関経験者としての実力を見せた。

稽古中には他の力士に話しかけられ、笑顔をのぞかせる様子もあった。元横綱白鵬の宮城野親方は「ものが別格だなというかんじ」と舌を巻いた。朝乃山に直接声を掛ける場面もあり、「有名な方がね(高砂部屋に)出稽古に行くんだと言ったらね、朝乃山に『頑張ってね』と伝えて下さいと言われて。それを伝えただけです」と明かした。

対する朝乃山は、この日の稽古について「今回は大、中、小とさまざまな力士がいたので、良い稽古ができた」。稽古場にいた宮城野親方については「いるだけで久しぶりにピリピリした感じ。自分が巡業に出たときから当時横綱白鵬関はずっと居たので、そういう巡業みたいなピリピリした感じがあった」と懐かしそうに語った。同親方から賛辞の言葉を贈られたと聞くと「うれしいですね」と少し照れくさそうに笑った。

三段目として臨んだ名古屋場所について「初日はとても緊張した」。出迎えたファンから大きな拍手を受けたことに「あの拍手は一生忘れない。改めて応援されていたんだなと気付かされました」と感慨深そうに語った。7戦全勝して優勝を飾っても「ホッとしていません」と言い、その心は「三段目の優勝は通過点だと思います。お客さんからもあまりおめでとうとは言われていないので。そういう気持ちを持っていきたいですね」と視線は常に前を向く。

場所後も帰省せず部屋に残り体を動かし続けたことで、コンディションは良好。体重も大関時代からは少し痩せたが、170キロ台をキープ。「今はあっても173キロを維持しながら相撲取ってるので、しっかり体も動けてる。無理に太る必要はない」。自身の相撲である「右を狙って、左前ミツとって右を差す」を本場所でできるかを課題にしながら稽古に打ち込む。「次は幕下ですし、上位だと思うので気を抜かずに頑張りたいです」と意気込みを見せた。