今回から場所の展望や見どころ、本場所中では評論できない私なりに感じたことを語りたいと思います。よろしくお願いします。

やはり注目は照ノ富士の土俵復帰です。先場所は貴景勝も途中休場して、7日目以降は関脇が結びの一番を取るという、異様な土俵でした。やはり横綱が最後に登場すれば土俵が締まります。1人大関で結びを取り続けていた貴景勝も少し肩の荷が下りるでしょう。金星を挙げたいという平幕力士のモチベーションも上がるし、お客さんも土俵入りを見られる。横綱がいることで相乗効果はいくつもあります。4場所ぶりの復帰で、誰しもが緊張する初日の土俵です。ただ、正代は真っ向から当たってくる相手なので、落ち着いて無難にスタートできれば、恵まれた体を生かしての四つ相撲ですから、優勝候補と言えるでしょう。

大関を目指す2人の土俵からも目が離せません。霧馬山は2ケタ勝利で手が届きますが、序盤5日間は最低でも4勝1敗で乗り切りたいところで、3勝2敗なら苦しむと思います。初日の相手・翠富士は相撲が遅い霧馬山には、やりにくい嫌なタイプですが「最初に当たっておく方がいい」ぐらいに考えればいいと思います。初場所が平幕だった大栄翔は昇進には2ケタ勝利は当然、少なくても13日目ぐらいまでは優勝争いに絡む必要があるでしょう。2ケタも12勝以上とかハードルは上がります。

朝乃山は、それなりに取れると思います。ただ最近「幕内は立ち合いが違う」とコメントしていますが、年齢的に少し衰えを感じているのかなと思います。2年で幕内の顔ぶれも変わっているし、どうしても緊張もあるでしょう。ただ、経験値は十分。自分の心との闘いになると思います。

最後に土俵以外で感じたことがあります。十両で落合、幕下で大の里というスター候補の土俵も今場所の注目です。他にもたくさんいます。彼らが本格的に幕内上位で活躍する前に協会には、古くからのファンをつなぎ留めるための、さらに新規ファン開拓のための準備期間にしてほしいと思います。具体的に思うことは館内のさらなるファンサービスです。国技館2階の廊下でも相撲観戦できるモニターを設置して、スタンドバーを置くのもいいでしょう。空気が吸える外の回廊にもグッズショップを構えても面白いと思います。土俵の充実も当然ですが、国技館って長い時間楽しめるな、また来たいなと思わせるエンターテインメント化は、もっと出来ると思います。コロナ禍で苦しい中、親方衆が奮闘しているのはよく分かりますが、来場者に優越感を味わってもらえるようなファンサービスがあってもいいのかな、と期待しています。(日刊スポーツ評論家)