大関とりの関脇霧馬山(27=陸奥)が、今場所後の大関昇進を確実にした。かど番の大関貴景勝を寄り切り10勝目を挙げ、昇進の目安とされる3場所合計33勝に到達。終盤戦にかけて力強い立ち合いが増え、相撲内容も安定してきた。2場所連続優勝へ、首位を1差で追う。朝乃山が大栄翔に敗れ2敗に後退し、1敗を守った横綱照ノ富士が単独トップに立った。

霧馬山が会心の相撲から節目の1勝を手にした。「思い切り当たっていく気持ちだった」と狙い通りの攻めで貴景勝から先手を取ると、深く右を差したまま休むことなく押し込み、圧倒した。勝負が決まると大きく息を吐き「勝ってうれしかった」。この日、NHKのテレビ解説を務めた兄弟子の元横綱鶴竜親方からも「ここ4日間は相撲の流れがいい」とたたえられた。

大関とりまで8年半。力士になる前段のテストを受けるため14年10月に来日した。もともと相撲経験はなかったが、師匠の陸奥親方(元大関霧島)が素質を見抜いて翌15年1月に正式入門した。100キロに満たなかった体重を徐々に増やしながら、モンゴルの遊牧民生活で培ったスタミナと強い足腰で出世。19年春場所で新十両に昇進し、その半年後、先代井筒親方(元関脇逆鉾)の死去に伴い井筒部屋に所属力士が移籍してきた。これが転機となった。

来日前からテレビで取組を見て憧れていた横綱鶴竜が兄弟子となり、土俵内外で指導を受けた。食事は茶わん3杯のご飯を食べるまで付きっきりで監視され、激しい稽古で地力をつけた。今では組んでも良し、押しても良しの万能型に成長。型にとらわれず自分の体に任せて取る柔軟な取り口はまるで“鶴竜2世”だ。

公私にわたって支えてくれた横綱は21年3月に現役引退し、場所後の6月3日に断髪式を控える。世話になった恩に報いる気持ちから「『大関霧馬山』という名前で行けたら。良い報告を持っていく」と誓って大関昇進を確実としたが、満足はない。2場所連続優勝へ1差でトップに立つ横綱照ノ富士を追う。「まだ3日間あるんで、最後まで一番、一番頑張ります」。引き締まった表情のまま国技館を後にした。【平山連】