大相撲の元大関朝潮で、昨年11月に小腸ガンのため67歳で亡くなった、先代高砂親方の長岡末弘さんの「お別れの会」が5日、都内のホテルで行われた。

入門したころからの弟子で、近大の後輩でもある大関経験者の前頭朝乃山(29=高砂)は、形見の品として、長岡さんが亡くなった後、遺体の手足から切った爪をもらったことを明かした。

「おかみさんから『弟子にあげた方がいいと思って』と、いただきました。お守りに入れて保管しています」。昨年11月の九州場所後、長岡さんの恵夫人から授かり、1月の初場所中は連日、故人の爪を持参して場所入りしていた。

恵さんは「納棺師の方が、親方の遺体から爪を切ってくださって『これを納棺の際に、後輩や弟子にあげるといいですよ』と言われて渡されました。それを朝乃山に。また、早く大関になってもらおうと思って」と明かした。さらに恵さんは、長岡さんの生前の言葉として「日本人の横綱をつくる」ということを目標にしていたという。

朝乃山は、長岡さんとの思い出を問われると「常に『前に出て自分の相撲を取れ』と言われました。それを胸に刻んで、残りの現役生活を悔いのないようにやっていきたいですし、もう1回、高みを目指してやっていきたいです」と、神妙な面持ちで話した。負ければ翌朝の稽古場でアドバイスを送られた。日常的に「自信を持って頑張れよ」と声を掛けられ、6場所出場停止中も「辛抱して、腐らずに頑張れよ」と、励ましの言葉をもらった印象が強く残っているという。

「近大の大先輩ですし、尊敬する親方でした」。長男の20歳の成人式の際、10年ほど前の写真だという、満面の笑みの遺影が飾られた祭壇に向かって献花。「現役でいる限り、結果が全てなので、もう1回、大関に戻ることができるように天国から見守ってくださいと誓いました」と、心を込めて故人に最後のお願いをした。ただ、長岡さんの願いは「日本人(出身)の横綱」。天国の恩師は、大関復帰では、まだまだ、満足しないかもしれない。