AKB48の高橋みなみが、25歳の誕生日の8日に卒業を迎えた。これまでAKB48グループを取材してきた日刊スポーツ横山慧記者が、高橋みなみの素顔について書いた。

      ◆

 高橋みなみは、メンバー思いで、スタッフ思いで、誰よりもAKB48グループ思いのメンバーだった。

 昨年9月、月刊AKB48グループ新聞の企画で、高橋とNGT48加藤美南の対談インタビューをした時だった。たまたま同じスタジオで別の撮影があり、対談を見学していたNGT48宮島亜弥が、高橋にあいさつした。「初めまして。NGT48の宮島亜弥です」。笑顔の裏に潜んだ「陰」を、高橋は見逃さなかった。

 「どうしたの? みやじ~!」。初対面の宮島をその場で作ったあだ名で呼び、肩を抱き寄せた。宮島はたちまち泣きそうな顔になりながら、思いのたけを高橋に話した。NGT48に加入して約1カ月。競争社会の中で、戸惑いや、悩みがあった。高橋はじっと宮島の目を見つめて話を聞き、笑顔と真剣な表情を交えて、アドバイスした。継続は力なり、ということだった。宮島は、涙目で何度もうなずいていた。今は研究生として、NGT48劇場のステージに立っている。着実に、力を付けながら。

 また、最近では、こんな話もあった。

 「制服を着よう」。今年2月16日、高橋のプロデュースする「スタッフ公演」が東京・AKB48劇場で行われた。高橋とゆかりのあるスタッフたちが、高橋と一緒にAKB48の楽曲を披露するというもの。衣装は、制服だった。男のスタッフは女装をせずに、学ランなどを着た。高橋の提案だった。「女装じゃないんだ?」「なぜ制服?」と疑問に思っているスタッフもいたという。

 実はこの時、公演に出演していたある男性スタッフが、4月いっぱいで退職することが決まっていた。数年間、グループを支えた同スタッフは、インターナショナルスクール出身のため、学生時代に制服を着たことがなければ、日本式の卒業証書を受け取ったこともなかった。ゲネプロ開始10分前、高橋はこっそり、スタッフたちに耳打ちした。「みんなで、●●(男性スタッフ)の卒業式をしてあげようよ」。ゲネプロの最後、サプライズで卒業祝いをされ、卒業証書を渡された同スタッフは、号泣していたという。

 新グループの初対面のメンバーにも、長年時間を共にしたスタッフにも、隅から隅まで気を配り続けた10年5カ月だったと思う。AKB48グループ関係者で、高橋のことを悪く言う人はいないだろう。【横山慧】