今年もこの季節がやってきました。AKB48選抜総選挙。今年は第10回の節目を記念して、海外の48グループにも立候補権が与えられ、名前も「世界選抜総選挙」とグローバルになりました。また、ランクイン枠も、記念枠が増設されて100位までに広がり、80位までが表彰された昨年までより、多くのメンバーにチャンスを与えられるようになりました。

 日刊スポーツでは今年も、総選挙の公式新聞として、国内48グループ所属全メンバーを連日、紙面で紹介しています。毎年、メンバーの取材に立ち会うのですが、なにせ対象は全メンバー。今年は国内に限れば、過去最多の324人が登場します。普段はあまり話す機会のないメンバーとも、短時間ながら取材ができ、あらためて魅力を再発見したり、連載記事や今後の取材のヒントをもらえたりと、大事なチャンスとして活用しています。

 今年、特に印象に残ったのは、兵庫や広島、香川など瀬戸内海を望む7県を拠点に活動するSTU48のメンバーたちでした。とにかく、現場でのあいさつがきめ細やかで徹底しているのです。撮影スタジオに足を踏み入れると、まず大声で「おはようございます。STU48の○○です。今日は1日、よろしくお願いします!」と元気にあいさつします。それだけでもすがすがしいのですが、それだけでは終わりません。今度はスタッフ1人1人に近づいて行って、1人ずつにあいさつを繰り返していました。全メンバーが、です。

 もちろん、あいさつは社会に出れば必要最低限の礼儀ではありますが、ここまでしっかりされると、大人たちだってうかうかしていられません。シャキッと背筋を伸ばし、「こちらこそ、よろしくお願いします」となるわけです。すべての取材が終わると、矢野帆夏(18)が後輩のドラフト研究生たちに声をかけました。「今からみんなで、スタッフさんたちにお礼を言いに行こう!」。メンバーを集め、再び1人ずつあいさつをしに回っていました。

 デビューシングル「暗闇」のセンターを務めた瀧野由美子(20)を過去に何度か、取材をさせてもらったことがあります。瀧野さんはそのたびに、必ず名前をフルネームで言い、真剣な表情で驚くほど丁寧なあいさつをしてくれます。最初は「緊張が解けないのかな?」とか、「以前に取材したことを忘れちゃったのかな?」などと思ったものですが、実はSTU48でみっちり教え込まれ、身に染み付いた習慣だったのです。これまで数々のアイドルグループ、俳優、タレントたちの隠れた姿、裏の姿を見てきましたが、あいさつだけで言えば、この世界でも指折りの謙虚さを感じられました。

 結成当時からの懸案だった船上劇場も、夏に船が完成する予定であると発表され、ようやく開始の見通しが立ちました。昨年はグループ生え抜きメンバーが1人もランクインできませんでしたが、さわやかで、謙虚で、まじめな少女たちが起こす「瀬戸内の風」に、今年は期待したいと思います。