地元での総選挙で初の頂点を狙うSKE48松井珠理奈(21)は、速報2位だった。名古屋・SKE48劇場での公演に出演し、中継で速報発表を聞いたが、荻野由佳に約2万票差をつけられ、3万8943票の2位。最後は悔しさを我慢できず、涙を流した。

 平静を装うはずだった。泣くつもりなんて、少しもなかった。都築里佳(22)に脇を抱えられ、迎えた発表。2位で名前を呼ばれると、松井は「ありがとうございます」と2度、頭を下げた。発表を終えても、表情を崩さなかった。「速報だから(最終結果は)分からないけど、どういう結果になっても、私にとって大切なのは、SKEを守ることです」。淡々と締め、ステージから去ろうとした。

 ところが、チームメートの北川綾巴(19)が突然、声を張り上げた。

 北川 珠理奈さんが1番です!

 思わぬ激励の言葉だった。悔しさと、優しさが入り交じった不思議な気持ちは、涙の粒となり、松井の目からポロポロとあふれた。

 松井 泣くつもりなんて、なかったのに…。綾巴が泣かせるから、泣いちゃったよ~。

 北川 絶対1位、取りましょう!

 松井 ファンの方みたいなこと言うね。2人で同じ曲、歌おうね。

 7月4日発売のシングル「いきなりパンチライン」では、2作連続で若手の小畑優奈(16)に譲っていたセンターの座を、約1年ぶりに奪回した。今年10月には、グループ結成10周年を迎える。追い風に乗った。自信を持って迎えた発表だけに、荻野との2万票差は、思いもよらぬ大差だった。

 昨年はHKT48指原莉乃、AKB48渡辺麻友に次ぐ3位で、先輩たちを超えることはできなかった。「来年こそはチャンピオンベルトを巻きたい」。大好きなプロレスになぞらえて、今年のトップ当選を誓っていた。

 2月に出場したプロレス興行で、メインイベントで敗れた後にこう言った。「負けから始まるストーリーもある」。荻野率いるNGT48の新興勢力は強力だが、地元名古屋で暴れさせるわけにはいかない。逆襲は、ここから始まる。