23歳で主演した出世作「トップガン」から36年。この7月で還暦を迎えるトム・クルーズの現役感にキングカズが重なって見えた。

続編「トップガン マーヴェリック」(27日公開)は、将官への昇進を拒み、テストパイロットとしてマッハ10の壁に挑むミッチェル大佐(クルーズ)の「今」からスタートする。

年輪の渋味みたいな余計なものはみじんも感じさせず、カワサキバイクにまたがって登場するマーヴェリックことミッチェル大佐のライフスタイルに変化は感じられない。撮影中に56歳の誕生日を迎えたクルーズのメリハリの効いた動きは、36年前の「トップガン」の、自分も若かった頃のあの興奮にまるっとリンクし、鼓動は早くなる。

年月を感じさせるのは、かつてのライバル、アイスマンことカザンスキー(ヴァル・キルマー)で、今や海軍大将にして司令官。重い病に冒されながら、ミッチェルの技量を信じて、不可能とも思える「特殊作戦」の教官に、やがてはその作戦の隊長へと、陰に陽に導いていく。

若きトップガン(エリート・パイロット)たちを、ミッチェルが実践練習でねじ伏せ、鍛えていく過程、無人航空機が進化した現代で、この作戦にはなぜパイロットの高度な技能が必要なのか…クライマックスの戦闘シーンに至るあれこれを、手だれのジェリー・ブラッカイマー総指揮のもと、「オブリビオン」(13年)のジョセフ・コシンスキー監督がテンポよく運ぶ。

一番の見どころは、やはり急な旋回、降下、上昇にともなう「G」に耐えるパイロットのリアルな表情だ。IMAX用のカメラを小型化し、コックピット内に持ち込んだ力業の撮影が目いっぱい生かされている。

36年前の作品では、実際の戦闘機を使っての特訓を耐え切ったのはクルーズだけで、他の出演者の「表情」は別撮りだったことが今回の作品解説書で明かされている。対して今回はクルーズはもちろん、若きトップガンたちも実地訓練とリアルなG撮影に耐えたそうで、失神寸前のような表情には一段上の臨場感がある。

思わず歯を食いしばり、肘掛けを握ってしまう。気付けば筋肉痛になるくらい足を踏ん張っていた。

クルーズの存在感に圧倒され、まさにそのための作品とも言えるが、若きトップガンの中では「セッション」(14年)のマイルズ・テラーと「ドリーム」(16年)のグレン・パウエルが光っていた。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)