旧作を何度か見返していたので、現在進行中のシリーズという印象がある。本人の外見がまったく変わらないこともあるからだろうか、福山雅治が湯川学を演じるのは9年ぶりと聞いてちょっと驚く。

そう知って見れば、「ガリレオ 沈黙のパレード」(16日公開)には、湯川のバディ的存在の内海薫(柴咲コウ)、湯川の親友で内海の先輩刑事でもある草薙俊平(北村一輝)との間に同窓会的雰囲気が漂っている。

内海は柴咲の実年齢に近い42歳になっている。ベテラン刑事の自信をのぞかせ始めた彼女が難題を抱え、久々に天才物理学者・湯川のもとを訪ねてくる。

行方不明となっていた女子学生が数年後に遺体となって発見されたのだ。容疑者として浮上したのは蓮沼という男(村上淳)。かつて草薙が担当した少女殺害事件でも容疑者となったが、証拠不十分のまま釈放されてしまった経緯から、草薙の落ち込みようは目を覆うばかりだという。

歌手志望だった被害者の女子学生は、地元の商店街が応援するアイドル的存在だった。そんな街に不敵な表情の蓮沼が戻ってくる。内海の依頼で湯川が現地入りしたのはそんな時で、周囲では蓮沼への憎悪が渦巻き、やがて夏祭りのパレードの最中に事件は起こる。

シリーズ15年の歴史で、原作者の東野圭吾さんとの信頼も厚いという脚本・福田靖=監督・西谷弘のコンビは、メインキャラ3人の感情の動きを、手に取るように見せてくれる。

少女の事件で蓮沼を有罪していれば、女子学生は今も生きていたはず…草薙が嘔吐(おうと)する場面の生々しさにヒリッとする。思い詰めた表情から「刑事の後悔」が伝わってくる。北村の濃い~熱演だ。

湯川も居合わせた地元食堂のシーン。温厚な常連たちや店の主人一家が、そこに蓮沼が姿を見せたとたんに「殺意」をのぞかせて、ゾワゾワとさせる。ここはカットを割らずに演劇のように撮ったという。臨場感がある。

そして、もちろん科学的な謎解きがあり、先のまた先がある意外な結末が今回も楽しめる。

登場人物の多いこの作品で、飯尾和樹、戸田菜穂、田口浩正、酒向芳、岡山天音、吉田羊、檀れい、椎名桔平と文字通り多彩な出演者がそれぞれに短時間でキャラを印象づけている。

主題歌「ヒトツボシ」は福山と柴咲のユニットKOH+が担当。「ガリレオ」好きの期待にしっかり応えている。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)