昨年の「燃えよ剣」で2度目の顔合わせとなった岡田准一を、原田真人監督は「超一流の武芸者が俳優のふりをしている人」と評していた。

そんな「本物」の身体能力を存分に生かしたのが3度目のタッグとなった「ヘルドッグス」(16日公開)だ。

最愛の人を凶悪犯から救えなかった元警官の兼高(岡田)は、復讐(ふくしゅう)だけを生きがいとしている。警察の「特務部門」がそんな彼に目を付け、関東最大のヤクザ組織「東鞘会」への潜入捜査へと駆り立てる。組織内で彼の相棒となるのが、こちらも「狂犬」のにおいを漂わせる室岡(坂口健太郎)で、息の合ったコンビは急速に頭角を現し、組織の核心に迫っていく。

筋肉のきしみを感じさせるようなリアルな格闘シーン。岡田のバリエーションのなんと多いことか。くらいついていく坂口の懸命さがスクリーンから伝わってくる。

ホテルの廃虚でミッション実行前に2人が体慣らしをするシーンが秀逸で、命を預け合った兄弟分の絆がじわりとにじんでいる。そこには、岡田が坂口にアクション指導する「舞台裏」のオフショットと見まがうようなカジュアルな空気が流れ、劇中キャラと俳優当人の一体感とはこういうものかと納得がいった。

組織の最高幹部に北村一輝、その愛人で兼高とも関係を持つ危険な女に松岡茉優、組織に出入りしながら潜入捜査員との連絡役を務めるマッサージ師に大竹しのぶと、演技巧者がこぞって心の闇を競演する。まるで「闇」比べのような趣さえある。

監督の思惑と俳優陣のはじけっぷりが、いい具合にバランスしているのだと思う。見ているこちらの心も弾む良質のエンタメ作品だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)