ワケあり荷物を運ぶプロの運び屋を描いた作品といえば、ジェイソン・ステイサムが主演した「トランスポーター」(02年)を思い出す。

韓国のヒットメーカー、パク・デミン監督は、同じ「運び屋」を題材に、思いっきりはじけたヒロイン像を作り上げた。

「パーフェクト・ドライバー 成功率100%の女」(20日公開)の主人公ウナを演じるのは「パラサイト 半地下の家族」で美術家庭教師を演じたパク・ソダム。脱北者として修羅の人生を歩んできたという設定で、運転技術や格闘ワザは洗練されたステイサム版とは趣を変えて自己流だが、したたかさやしぶとさでは一歩上を行っている。

「ワケあり荷物」として、彼女が預かることになってしまった少年ソウォンにふんするのは「パラサイトー」で教え子役だったチョン・ヒョンジュン。苦難を乗り越えるうちに絆を深めていく様子には、「名コンビ」ならではのあうんの呼吸が感じられる。

ウナは運び屋のプロとして海外逃亡を図る賭博ブローカーとその息子ソウォンの「特送」を引き受けるが、彼らを追う組織によってブローカーの父はあっけなく殺害されてしまう。

組織の狙いは親子が持って逃げた貸金庫のカギで、それを隠し持っているソウォンが標的となる。ミッション達成のプロ意識と少年への情から逃亡に手を貸すことになったウナだが、追っ手のボスは実は警察幹部。そして、ウナの名前が浮上したことで、かつて彼女の脱北に関わった国家情報院も動きだす。持ち前のスキルで立ち向かうが、敵はあまりにも強大で…。

デミン監督はカー・レース映像を分析して、ウナの運転技術に臨場感を持たせたという。高度な技術を知っているわけではないが、ギアやブレーキの使い方に確かにリアリティーを感じる。小柄な体ながら、全体重を使って屈強な男を巧みにねじ伏せる彼女のアクションにも説得力がある。

自己流の粗削りなテイストも織り込まれ、脱北者としての命懸けのこれまでがあるからこそのサバイバル術も実感させる。「パラサイト」とは180度趣を変えたソダムの熱演だ。

悪徳警察幹部は「ベイビー・ブローカー」にも出演したソン・セビョク。ウナのボスには名バイプレーヤー、キム・ウィソン。そして国家情報院のしたたかな女性職員には個性派ハン・ミヨンと演技巧者がそろっている。

続編が待ち遠しくなる快作だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)