「徹子の部屋」(テレビ朝日系)は今年で放送48年、1万2000回を越えた。時に単刀直入な黒柳徹子(90)の質問は不思議にゲストを傷つけない。孫のような世代の人に対しても、この人が余さず敬意を持って接しているからだと思う。

テレビ草創期から活躍を続けるそんな資質はどうやって育まれたのか。その幼少期を描いてベストセラーとなった自著「窓ぎわのトットちゃん」がアニメとして初めて映画化され、8日から公開された。

時代は第2次世界大戦が終盤に差しかかった頃。日常生活は少しずつ貧しく、窮屈になって行くが、バイオリン奏者の父(声・小栗旬)と優しい母(杏)に恵まれたトットちゃん(大野りりあな)は、伸びやかに暮らしている。

今なら「元気な子」で済まされるかもしれないが、落ち着きのない行動は授業妨害と決めつけられ、小学校を追い出されたトットちゃんは、独特な自由教育を貫くトモエ学園に通うことになる。入学試験代わりに、4時間を越える彼女のとめどのない話にじっと耳を傾けた校長先生(役所広司)は「君はほんとうはいい子なんだよ」とそのすべてを受け入れる。

戦争が父の仕事に投げかける影や、国の方針に従わない学園への圧力は、きっともっと深刻だったのだろうが、少女の目を通して描かれたこの作品には、そこここに楽天的な空気が感じられる。八鍬新之介監督以下シンエイ動画の手だれのスタッフが描くアニメは柔らかく、温かさが染みる。

当たり前のように弱者をいたわるトットちゃんと体の弱い級友の少年が、水たまりの中で踊って空腹を忘れるシーンに思わずほろりとさせられた。

担任先生役の滝沢カレンを含め、声の出演者の抑制の効いた好演に原作者黒柳へのリスペクトが感じられる。主題歌はあいみょんが書き下ろした「あのね」。暗い時代の不思議に明るい物語はほっこりとさせる一方で、今に通じる平和への思いを雄弁に語っている。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)