デンマーク王の父を叔父に殺された王子の復讐(ふくしゅう)心は、さらなる悲劇をもたらす。シェークスピアの「ハムレット」は復讐(ふくしゅう)の連鎖のむなしさを今に伝えている。
「龍とそばかすの姫」以来4年ぶりとなる細田守監督の新作「果てしなきスカーレット」(11月21日公開)は、シェイスクピア悲劇の王子を王女に置き換え、時空を越えた細田ワールドから改めて生きる意味を問いかける。
復讐に失敗したスカーレット(声・芦田愛菜)は「死者の国」で目を覚ます。ここにいる人々は略奪と暴力に明け暮れ、敗れた者は「虚無」となって存在そのものが霧消する。父の敵だった叔父のクローディアス(役所広司)もこの世界におり、強権を手にして再生の望みをかなえる「見果てぬ場所」を目指していることを知る。
再び復讐心を募らせるスカーレットの元に叔父は次々に刺客を送り、激しいバトルが繰り広げられる。360度から撮った格闘技中継のような滑らかな動きが印象的だ。
現世で復讐を誓った時から鍛え上げた戦闘能力も、女性のハンディから満身創痍(そうい)に。そこに現れたのが現代日本から来た救急看護師の聖(岡田将生)だった。敵の刺客も懸命に救命する聖にスカーレットは違和感を覚える。が、水と油の2人はしだいにひかれ合っていく。2人の旅の果てには…。
無限の大地が広がりながら、閉塞(へいそく)感の漂う死者の国。実写では表現し得ない状況の中で、巧者ぞろいの俳優たちが、文字通り登場キャラになりきって声で演じている。細田監督の独特の世界は健在だ。
山路和宏、柄本時生、青木崇高、染谷将太、白山乃愛、白石加代子、宮野真守、津田健次郎、吉田鋼太郎、斉藤由貴、松重豊、市村正親…いやでも顔が浮かんでしまうが、まるで入念なメークをしてそこで演じているようにイメージが重なる。前作に増して見応えのある1時間51分だった。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)




