2004年に米同時多発テロ事件を発端としたイラク戦争への当時のジョージ・W・ブッシュ政権の対応を批判するドキュメンタリー映画「華氏911」を発表したマイケル・ムーア監督が、いよいよ待望のドナルド・トランプ大統領を題材にした映画の制作に着手したことが明らかになりました。アポなし突撃取材で政治や社会問題を一刀両断にしてきたムーア監督は、1999年に起きた米コロンバイン高校銃乱射事件を題材にしたドキュメンタリー映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」(02年)でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞。その時の授賞式で「ブッシュよ、恥を知れ」とスピーチしたことは多くの人の記憶にも残っていることと思いますが、そんなムーア監督が今度は鋭くトランプ大統領に斬り込むことになりました。公開時期は明らかにされていませんが、開催中のカンヌ国際映画祭で国内外の配給先を探していると伝えられています。

 タイトルは「華氏911」とトランプ大統領が大統領選で勝利宣言を行った11月9日をかけて「華氏119」になるとのこと。現在制作中のため、どのような内容が描かれるのか詳細は明かされていませんが、「(トランプ大統領には)何を投げつけても効くことはないし、何が明かされようと突っ立ったまま。現実問題、頭脳で彼を負かすことはできない。例え自らを傷つけたとしても、翌朝には再び立ち上がって変わらずツイートを続ける。それがこの映画の結末だ」とコメントしています。

 選挙戦中は民主党のヒラリー・クリントン候補を支持し、トランプ氏を痛烈に批判してきたムーア監督ですが、早い段階からトランプ大統領の当選を予言。「ドナルド・トランプが大統領になる5つの理由を教えよう」と題した記事を昨年7月に自身のサイトで発表するなどしていました。さらに、大統領選直前には、「マイケル・ムーア・イン・トランプランド」と題したドキュメンタリー映画を電撃発表。しかし、この作品はムーア監督らしく鋭く数々の過激な言論に反論する内容かと思いきや、オハイオ州の劇場で開催を予定していたワンマンショーを題材に観客を前に「トランプ氏を支持していいのか?」ということをテーマに一人トークを続けるというものでした。多くの人が、トランプ氏叩きを期待していただけに、少し肩透かしだったとも言われていますが、同作に続く「華氏119」こそは、「反トランプ」「打倒トランプ政権」を掲げた内容になるのではと期待されています。

 共にエンターテインメント型のパフォーマンスを得意としているトランプ大統領とムーア監督の闘いは、どちらに軍配があがるのでしょう。どんな隠し玉を披露するのか、政権を瓦解させる鍵となることができるのか乞うご期待です。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)