かつて龍に守られ平和だった王国を取り戻そうとするラーヤがヒロイン。丸いフォルムの不思議な生き物トゥクトゥクを相棒に、冒険の旅に出る。

壮大な物語を貫くテーマは、人を信じることの大切さだ。幼いころ、父を失ったことで人を信じることをやめてしまったラーヤの成長物語でもある。ラーヤと対照的なのが、最後の龍シスー。天真らんまんで誰でも信じすぎてしまうという性格。危なっかしく見えるが、目の表情がものすごく繊細だ。

信じる、という言葉が大仰なように感じるなら、コミュニケーションに置き換えてもいい。孤独に生きてきたラーヤが誰かとコミュニケーションを取ることで成長していく、シンプルだが力強い物語になっている。人との距離が物理的にも心理的にも遠い日々が続いている中、心に響く。魔物ドルーンが、人の不和が生んだ魔物という設定も何やら意味深だ。

ひとりでもすっくと立っているラーヤがかっこいい。剣さばきやアクションも、今までのヒロインとはまったく違う強さがある。龍のシスーは声もしゃべり方もフワフワ加減も愛らしい。【小林千穂】

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