漫画原作、しかも有料放送であるWOWOWドラマの映画版ということで、どちらかに触れていないと…とハードルを感じ、見ないという選択をしてしまうのは、もったいない1本だ。映画は、原作に準じて描かれたドラマの数年後を舞台に、岸善幸監督が作り上げたオリジナルの物語で、映画単体でも世界観に没入出来るように作られている。

無給ながら犯罪者の更生に親身になって取り組む、保護司を演じる主演の有村架純を筆頭に、俳優陣の演技からは生きる鼓動を感じる。有村は昨年11月の完成報告会で、映画からドラマの順で撮影したと説明し「みんなが集中していたのに刺激を受け、相手の芝居に心が毎日、揺さぶられ本当にお芝居って楽しいと心から思えた」と振り返った。

俳優が役として生きることに、とことん誠実な作品だ。中でも森田剛は、仮釈放後は誠実に働く口下手な元殺人犯を、人生の惨めさが画面からにじみ出るほどの存在感で演じた。21日の公開直前舞台あいさつで、泣かされたポイントを聞かれ「自分に、ですかね」と自画自賛したのも納得だ。

岸監督が「映画監督になって、初めてモニターの前で泣いた」と語るように、登場人物の心情を色濃く映し出す食事のシーンも秀逸だ。食事をうまく見せる映画に、外れはない。【村上幸将】(このコラムの更新は毎週日曜日です)