深層にある黒いものがどんどんあぶり出される。「新聞記者」(19年)など数々の話題作を手がける藤井道人監督が「村」という閉ざされた世界で生きる人々を通し、日本社会の抱える「闇」を描く。
舞台は日本の原風景が残る山あいの「霞門(かもん)村」。かやぶき屋根が並び、夜霧が幻想的だ。「能」の伝統を受け継ぐ村でもあるが、近くの山には巨大なゴミ最終処理場がある。
この村で能に魅せられ、育った片山優(横浜流星)は、父親が犯した罪を背負い、ゴミ処理場で働く。いじめ、さげすみ…。どん底の中、幼なじみの美咲(黒木華)が東京から戻ったことをきっかけに再生の道を歩むが…。横浜の繊細な演技に息をのんだ。120分の間、心情や容姿が何度も「変化」する。笑うでもなく、絶望でもなく、ミステリアスな「能面」のよう。「村」は何も田舎だけではなく、会社組織、それぞれの業界にも「ムラ社会」があり、同調圧力がある。人々が「能面」をつけて「薪能」の行列に加わるシーン。美咲のセリフが印象深い。「全員が同じ表情で同じところに向かう。何の疑問も抱かずに」。「村」は日本社会の縮図でもある。【松浦隆司】
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