眉間にしわを寄せた土屋太鳳の、けげんそうな顔が目の奥に残っている。思わぬ過去が露見した途端、動揺し、おびえすら漂わせた杉本哲太の激変ぶりも忘れられない。Snow Man佐久間大介の顔全体に広がる陰鬱(いんうつ)な影、斉藤由貴の冷徹な視線、瞳の奥に生気のかけらもない片岡礼子…とにかく、どの顔も印象的な1本だ。

土屋演じるウエディングプランナーは、同僚の誘いを受けて気が進まないながらもマッチングアプリに登録。デートに臨むも相手はプロフィルとは別人のように暗く、執拗(しつよう)にメッセージを送ってきたため、勤め先の結婚式場の取引先でもある、アプリ運営会社のプログラマーに助けを求める。その頃“アプリ婚”した夫婦が惨殺される事件が連続で発生し、被害者が主人公の勤め先で式を挙げたことが判明する。

脚本から開発するオリジナル作品にこだわり、今や人気監督となった内田英治監督が、飛躍を遂げた20年「ミッドナイトスワン」公開の頃、サスペンスやスリラーに挑戦したいと考え、今作を構想したという。試写を見た際、同監督にしてはありそうな話で、展開も窮屈に感じた。気になって初めて資料に目を通すと、登場人物の過去と事件との整合性を取るのに苦心したと書いてあり、なるほど…と得心した。それが終盤は、これでもかとばかりに物語は急転し、怒濤(どとう)の展開でラストまで…やはり内田英治をなめてはいけないと思い知らされた。【村上幸将】

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