大阪府などへの3度目の緊急事態宣言は、効果が十分に見えないまま、延長が決定しました。酒類を提供する飲食店には休業要請が続きます。前例のない“禁酒”の延長に大阪の繁華街・ミナミの飲食店からは悲鳴が上がっています。

延長が正式に決まり、一夜明けた8日夜。大阪・ミナミの道頓堀はシャッターを下ろしたままの店が目立ち、人影もまばらです。

大阪の老舗の串カツ店「串かつだるま」の道頓堀店、中嶋隆晴店長(37)は「もう、しんどいというよりも…」と言葉を途切れさせます。同店では酒類の提供を見合わせ、串カツのみの営業を続けています。

昨春、「串かつだるま」は創業以来、91年間守ってきた独自ルール「ソースの2度漬け禁止」の共有ソースを変更し、新しい生活様式に合わせ「ソースはかけて食べてや」に変更しました。容器にたっぷり入ったソースに串カツをつけるのが醍醐味(だいごみ)の1つですが、新型コロナウイルスの感染が終息するまでの特別ルールです。

串カツといえば、ビールとの組み合わせが最強ですが、3度目の緊急事態宣言では酒類の提供がNG。中嶋店長は「お客さんから『やっぱりビール飲みたかったわ』という声があります。覚悟はしていましたが、実際やってみたら予想以上に厳しかったです」。緊急事態宣言の延長が決まり、来週からも「酒なし営業」が続きます。

大阪・ミナミにある居酒屋の男性店主(41)は「仕入れや仕込みは1日1日が勝負。出口が見えなければ、どこを目標に営業をすればいいのか。休業要請に協力するにも、もう体力の限界を超えている」と憤りを隠せません。

大阪市内の焼き鳥の店主は「同じことの繰り返し。本当に月末で解除されるのか。個人経営の店は廃業に追い込まれる」と不安を口にします。

「短期集中」から一転した緊急事態宣言の延長。「解除の数値目標を示してほしい」。何を達成すれば、串カツとビールの最強の組み合わせが“復活”できるのか。科学的な根拠を示してほしいと願っているのは中嶋店長ら飲食店店主だけではありません。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)