まだ、走れる。まだまだ、走れる。砂漠やジャングルなど過酷な自然環境下に設定された数百キロのコースを何日もかけて走る「アドベンチャーマラソン」。世界7大陸のアドベンチャーマラソンを日本人として初走破した堺市の北田雄夫(たかお)さん(38)の「冒険」は今年も続きます。

「足の神様」として知られる服部天神宮(大阪府豊中市)の「福飛脚」として神事に携わっている北田さんは、今夏に神職(神主さん)の資格取得を目指しています。約1カ月の検定講習会を受講する予定です。

「走ること、祈ることは、まったく違うように見えますが、可能性と面白さを感じています。僕が走ることで、歴史、文化をつなげることができたらなと思っています」

未知のジャンルへの挑戦ですが、目指すのは日本初の「神主アドベンチャーランナー」です。

土台はあります。北田さんは走って依頼品を配達する「リアル飛脚」としても活躍しています。明治維新とともに衰退した飛脚ですが、令和の時代に飛脚をよみがえらせました。

依頼者の気持ちと依頼品を走って届ける配送サービス。依頼主はアスリートの挑戦へのトレーニングに関わることで「応援」することになり、挑戦の過程に価値を見いだす「ビジネスモデル」です。

送料は距離1キロにつき400円。例えば600キロなら24万円。日本一、遅くて高いサービスですが、京都に本社のある特殊トレーラーを扱う会社の社長からの依頼を受け、手紙の入った筒を、京都から福岡支社までの約650キロを走って届けた実績もあります。

デジタル全盛の時代に超アナログなサービスですが、北田さんはこう言います。「託された思いを背負い、人が運ぶことに意味があるのかもしれない」

2月下旬には米アラスカで開催されるアドベンチャーマラソンの大会に挑戦します。極寒の中、1600キロを制限時間は30日、ソリを引きながらひたすら走ります。これまで挑戦した日本人はいません。

モチベーションはどこからくるのでしょうか。

「1番は好奇心。知らない世界を見てみたい。それと同じぐらい、応援してくれる人と分かち合いたいという思いが強い」

極寒、マイナス30度のアラスカ。まだ、走れる。まだまだ、走れる。人間の限界を超えるには「祈り」が必要かもしれません。1600キロ走破の後には、「神主」を目指します。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)