地上波レギュラーは6本を数える。売れっ子だ。お笑いコンビ、麒麟の川島明(40)。今から18年前、第1回M-1グランプリで全くの無名ながら決勝進出を果たし、自ら人生を切り開いてきた。スマートな存在感で、10月からフジテレビ系「BACK TO SCHOOL!」(水曜午後10時)と「ウワサのお客さま」(金曜午後9時)のMCを務める。今や日本を代表する“低音の魅力”となった川島の“本音”を聞いてみた。

★中学3年で声変わり

「BACK-」は、フジテレビ杉原千尋アナウンサー(24)とジャニーズの風間俊介(36)とともに司会を務める。

「風間君とは、元々は『ニッポンドリル』という番組でずっと共演してて、僕の楽屋に(千鳥の)ノブと遊びに来るんですよ。一緒にご飯に行ってしゃべっても、漫画とか、人生の考え方とか、本当に相性がいい。一緒にやれる心強さがある。アイドルではなく、実力でのし上がった。僕もなんですけど、2人ともコツコツやってきたっていうのがね」

番組では芸能人が学生時代に戻り、かなわなかった夢をかなえる。

「高校時代にはあんまり戻りたくない(笑い)。ずっと吉本入ろうとか、お笑いやろうとか思ってたから、高校の3年間は特に勉強してなかった。授業中に競馬新聞作ったり、深夜ラジオ応募のネタ考えたり。今とあんまり変わってない」

「ウワサの-」では、サンドウィッチマンとMCを務める。

「サンドウィッチマンが大好きで、すごいうれしくて。M-1で無名からという共通点もあるし。サンドさんのいいところは、懐が広いところ。笑いをどうしても取りに行くぞというスタンスでもなく、年齢的にも芸歴的にもお兄さん。2、3歳上のお兄ちゃんと遊んでもらってる安心感がある。人を傷つける笑いではないんでね。ほんま、菩薩(ぼさつ)みたいな2人やと思うんですよ」

司会という仕事が大好きだという。

「自分の中ではギャグがあるわけでもないし、なんか瞬発力のある笑いというか、なんかネタやってということもない。だから、1歩引いてバランスを見て、みんなとしゃべるのが好きやったりしたんで」

とはいえ、騒然としたバラエティーでは、川島の低音のひと言が雰囲気を変える。

「みんなワーッってなって、胸ぐらつかんでみたいなのを僕がやっても面白くないと思うんで(笑い)。やっぱり誰もおらへんところへっていうのが好きですね。スナイパーみたいに」

高い声を張るのが基本のお笑い界で、低い声は異質な価値がある。

「これはもう、親のおかげですけどね(笑い)。中学2、3年までは、めっちゃ高い声だったんですよ。それがコンプレックスだったんですけど、中学3年の時に声変わりになって、この声なんですよ」

小さい頃からお笑いに憧れていた。

「関西なんで新喜劇を見たり、漫才を見たり。兄貴と一緒に深夜ラジオを聞いたり。とにかく小さいころから憧れていて、高校になって、やろうと決めた」

高校を卒業して半年間、アルバイトでお金をため、吉本興業の養成所、NSCに入所した。

「合格通知が来て、それで親にバレた。というか、分かってもらった。『何すんねん』って言うのに、答えを濁し続けてね。親としては、そんな甘い世界じゃないと分かってるからね。でも、言い出したらきかんってのを分かってるから、やるだけやってみたらええんちゃうんかって」

★01年M-1で5位入賞

NSCで相方、田村裕(40)と出会った。

「僕は最初、ピンでネタをやってたんですよ。田村は違うところでやってて。で、僕もほんまは漫才やりたかったんですけど、1人でやってた。で、先生がすごいほめてくれたんです。『川島、いいよ』と。で、帰りしなに田村が声をかけてきた。『お前、おもろいから、俺とコンビ組んでやってもええで』と、すごい上から言われたんですよ。真上から言われて、すごい自信やなこの人と。でもまあ、声かけられてうれしいんで、2人でやりだしたら、まあ何を言ってるか分からへんし、ツッコミもめちゃ下手やったから、とんでもないのにつかまったなと(笑い)。でも、なんかよかったのは、明るかったんですよ。底抜けに明るくて、いつも笑っとんなと」

99年10月に麒麟を結成した。全く売れずオーディションに落ち続ける。それが、01年の第1回M-1グランプリで5位に入賞した。

「M-1は出たのが、2回目のテレビ。それで人生変わりました。それまで月に1回しか仕事がなかったけど、次の日から月に1回しか休みがなくなった。楽屋に戻ったら、吉本の人が来て『よかったら、吉本入らへん?』って。入ってるのにスカウトされる、それくらい知られてなかった」

売れっ子になったが、07年に相方の田村が子供時代の極貧ぶりを明かした著書「ホームレス中学生」が225万部のベストセラーになった。

「国民的大ヒットになって、コンビとしてはうまくいかなくなって。テレビに呼ばれても、僕は田村君の付き添いというか。田村君は貧乏話をして、僕は横にいるだけ。ま、楽しくなかったですね、正直ね」

それでも解散は考えなかった。

「それは1度も思ったことがない。田村も思ったことがないと思う。まあ、距離があれども、吉本は漫才の出番が入ってくるんで」

2億円といわれる印税を、田村はアッという間に使い果たしたという。

「番組に呼ばれて、その波が引いて全部なくなった。田村も、お金を持っているのが怖くなったと思うんですよね。これが自分と麒麟を狂わせたもんやと思っているから、散財しちゃったんだと思う。コンビ的には今が、一番仲がいい。田村は『ホームレス中学生』バブルが終わって、好きなバスケに行き始めた。今もバスケ芸人として、いろいろなところへ行っている」

★サックス武器に!?

40歳。文字通り惑わずにいる。

「中途半端より、早く40歳になりたいと思ってたんですよ。ガラッと変わったのは、やっぱり若手ではない。中堅、ベテランの域に入ってくると、スタッフも話を聞いてくれるようになった。40歳になって、いいプレッシャーで楽しいですね。軽率な笑いで人を傷つけたらアカンなとか」

15年に結婚した夫人との間に2歳の娘がいる。

「子供で人生が一番変わりました。結婚もそうなんですけど、言うたら紙に名前を書いただけじゃないですか、法律的なもんで言うと(笑い)。子供は、うちのオカンが命を懸けて産んでくれたんで。人生で、自分の人生より大切な生きものが生まれるなんて思ってもいなかった。目に入れてもって言うけど、寿命を30年、40年あげられる存在っていうのがね。自分の親もそうやったかなあとか」

キャリア20年を超えた。まだ芸人人生は続く。

「藤井隆さんに音楽を勧められて、テナーサックスをやった方がいいと(笑い)。フットボールアワー後藤(輝基)さんからは、買うんやったら300万円くらいのいいのを買えと。300万円はあれですけど、ちょっと頑張ってみたいですね。サックス」

低音に、さらに武器が加わりそうだ。【小谷野俊哉】

▼「BACK TO SCHOOL!」でともにMCを務めるフジテレビ杉原千尋アナウンサー(24)

初めてお仕事をさせていただいた時から、優しくて面白い方という印象は変わっていません。加えて、番組に向き合う真摯(しんし)な姿勢に、私も毎回勉強させていただいています。そんな川島さんに会える収録の日はとても楽しみにしており、前日の夜からニヤニヤしています(笑い)。私の発言や、失敗、間違いに突っ込んでくださり、収録では何度も助けていただいています。お体に気を付けてたくさんの方を笑わせてください!

◆川島明(かわしま・あきら)

1979年(昭54)2月3日、京都府宇治市生まれ。高校卒業後の97年10月NSC大阪校入所。99年、同期の田村裕(40)とお笑いコンビ、麒麟を結成する。01年「第1回M-1グランプリ」で決勝に進み5位。以後は03年8位、04年から3年連続3位。16年「第16回IPPONグランプリ」優勝。関西地区の競馬番組「KEIBA BEAT」(日曜午後3時)のキャスター。俳優として09年のNHK連続テレビ小説「つばさ」、「なつぞら」(19年)に出演。趣味はゲーム、競馬。特技はイラスト。179センチ、血液型AB。

◆フジテレビ系「ウワサのお客さま」

隠れた名店から人気チェーン店まで、日本中の店でウワサになっている客の生態をあぶり出す。爆買い、大食い、芸能人、女子大生軍団、超高級カーで乗り付ける驚異の客にサンドウィッチマンと川島がツッコむ。

(2019年12月22日本紙掲載)