女優清原果耶(21)が舞台「ジャンヌ・ダルク」(11月28日から東京建物Brillia HALLなど)で、初舞台&初主演を務める。10代で朝ドラヒロインを務め、現在21歳。「気合」で走り続けた時期を過ぎ、20代に入り自分の感情と向き合い始めた。そして今、「現場が好き」という思いを再確認している。【佐藤勝亮】
★しがみついていく
ヒロインを務めたNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(21年)などで見せた清純派のイメージをガラッと変え、闘志みなぎる令和版ジャンヌ・ダルクに清原が挑戦する。
「お話をいただいた時は『大丈夫かな』って思いました。ジャンヌ・ダルクって、ものすごい数の人々を引っ張っていく役柄ですし、かじを取り続けるってとっても大変だなと思うんです。初舞台でそんな大きな役ができるのかって、ちょっと不安になりました」
取材は、顔合わせや稽古を前にして行った。
「初めての舞台なので、プレッシャーはあります。まだ何も知識も経験もなく、その中でこういう力強い芯の通った少女を演じなきゃいけないので、(演出を務める)白井(晃)さんや、舞台制作に携わる皆さんに教えてもらいながら頑張って、しがみついていかないとなと思っています」
14年に現在所属する「アミューズ」のオーディションフェスでグランプリを獲得。翌年15年のNHK朝ドラ「あさが来た」で女優デビューした。その後も多くの映画賞などで賞を受賞。なぜ、このタイミングで初舞台に踏み出したのか。
「マネジャーさんと舞台の話をしている時に、『(演出の)白井さんがすごくあなたに合うと思う』ってずっと言ってくれていて。今回その白井さんが『ジャンヌ・ダルク』のお話をくださったとお聞きして。『じゃあそれは挑戦してみたいな』って思いました」
初舞台に挑戦するにあたり、柔軟と筋トレを始めたという。舞台では甲冑(かっちゅう)を着用して演技をする場面もある。
「基礎体力をつけようと思って、最近柔軟と筋トレを始めました。舞台は本当にしんどいって聞いて、体力が持たないかもしれないから、基礎体力を上げるために準備しようと。甲冑を着て演技はこれまでにないですね。(不安は?)でも多分、ジャンヌが甲冑を着ている時に不安に思ったことはないと思うので、そこについて不安に思ったことはないですね」
★堀北真希&有村架純出世作
舞台はジャンヌ・ダルクという1人の少女が、時代や政治に翻弄(ほんろう)されながらも、自らの信じるものをつかみとるまでの「生」に焦点をあてた人間ドラマだ。10年に堀北真希さん、14年に有村架純が初舞台&初主演を務めた“伝説の舞台”でもある。
「演じることが決まってから、映像で見させていただきました。“若き英雄”じゃないですけど、情熱とか希望とかみんなを巻き込んでいく力強さみたいなものを持っていると感じました。ただ、そんな彼女が怖かったこととか、嫌だったこととか。裏の陰の部分を稽古中に見つけていければいいなと、どちらの公演を見ても思いました」
演じる主人公・ジャンヌは、17歳でフランスの救世主になりながら、2年後に火刑に処せられて亡くなった。
「まだセリフも言ってないので、理解度が浅いとは思うんですけど…当時の方々が抱いているジャンヌへの印象とは違うというか、もっと普通の子だったんだろうなと感じています。普通の村に生まれ育った少女だったんだろうなと。だからさっき言った陰みたいな部分を拾えたらいいなと思ってます」
★いま試行錯誤の途中
ジャンヌが亡くなったとされる19歳-。清原が「おかえりモネ」のヒロインを務めた時期だ。そこから約2年。20代に突入し、心境の変化はあったのか。
「特別大きな何かがあったわけではない気がします。ただ、もっといろんな価値観とか感受性を自分の中で育てたいなと思い出したのは、20代に入ってからかもしれないですね。今までは、目の前にあるものだけに突進して『頑張るぞ!』って気合で生きてきたけど、なんかそうじゃない生き方もあるのかなって。今、試行錯誤の途中ですね」
そう思うようになったのは、作品で出会う監督の言葉などがきっかけだったという。「おかえり-」でヒロインを務めた21年末に筆者が行ったインタビューでは「時間に置いていかれないよう、必死に走り続けていた1年」と、その年を振り返っていた。
「多分ここ数年、ちょっと走りっぱなしだったので、今年は自分ともちゃんと向き合って、いろんな感情の整理をちゃんと毎回毎回出来るようにしようって思っていました。そういう意味では確かに20代に入って、21歳になってからちょっと生き急がなくなったというか、落ち着いた部分はあるのかもしれないです」
★やっぱり仕事好き
自分と向き合ったことにより、新たな発見はあったのか。
「気づいた新たな発見。うーん。私、『現場好きだな』と思いました。やっぱり現場に行きたいなって思いますね。それこそ舞台の現場はまだだけど、映画を見た時とか、新鮮な感性を得た時とかに、『あー現場に行きたいな』ってふと思ったりしていたので、やっぱり仕事が好きなんだなと思いましたね」
21年の映画「護られなかった者たちへ」が、22年にイタリア・ローマで開催された「Asian Film Festival」のコンペティション部門で上映され、清原が「最優秀女優賞」を受賞した。「タイミングとご縁があれば」と、海外での活動にも意欲を持っている。ジャンヌは、救世主になった2年後にこの世を去った。清原は2年後、まだ23歳だ。
「若いですね、23歳。23歳なんて本当にまだ生まれたてぐらい、多分人生始まりたて。もっともっと今より受け皿を大きくして、いろんなものを見て、豊かな人間になりたいです」
2年後、そしてこれからも日本を代表する女優でありつづける。
▼「ジャンヌ・ダルク」の演出を務める白井晃氏(66)
ドラマで見ていた清原さんは、人間の内にある情感をとても繊細に表現できる女優さんだと感じていました。若い女優さんで、そんなことを感じさせる人は少ないので、ぜひとも舞台に挑戦してくれたらと思っていました。初舞台に向け、初めて会った彼女は、とても芯が強そうに見えて、ガラスのように繊細でもろさもある。両面を持ち合わせている、そんな印象でした。話しているうちに自然とあふれ出す涙を見ていて、自分の身体の中に収まりきらないたくさんの感情を抱えている女優さんだと思いました。それが、人の心を引きつけてやまない理由だと思います。
◆清原果耶(きよはら・かや)
2002年(平14)1月30日、大阪府生まれ。14年アミューズオーディションフェスでグランプリ獲得。15年NHK朝ドラ「あさが来た」で女優デビュー。19年映画「デイアンドナイト」などで日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞の新人賞。21年の朝ドラ「おかえりモネ」でヒロインを務め、大みそかの「紅白歌合戦」でゲスト審査員。22年TBS系「ファイトソング」で民放ドラマ初主演。162センチ。
◆「護られなかった者たちへ」
東日本大震災発生から10年目の仙台で、人格者が全身を縛られ餓死する事件が連続で発生。別事件で服役、出所した利根泰久(佐藤健)が捜査線上に浮かび、宮城県警捜査1課の笘篠誠一郎(阿部寛)は、利根の幼なじみ円山幹子(清原)含め捜査を進める。




