すごいって言われたい、そしてモテたい-。木村昴(33)のTBSラジオ初冠番組「木村昴の聴いてくれないと打ち切り」が10月6日にスタート。目指すは超人気番組。ラジオへの思いはもちろん、多方面で大活躍する原動力や今後の目標などをラジオ放送本番中に熱く語った。【加藤理沙】

★中学生デビュー

音楽家の両親の元、幼少期はドイツで過ごした。高校生まで家にテレビがなかったという木村にとって“エンタメ”と言えばラジオと母のレコードだった。

「ドイツにいた頃はクラシックを一生流しているラジオなどを聴いて。日本に帰ってくると、テレビがないから友達の家に行って、友達が録画していた『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『エンタの神様』を見る。漫画も当時は買うお金がなかったので、児童会館で読んでいました。家では漫画やアニメではなく、ラジオとレコードでした」

「ドラえもん」のオーディションを受けた中学時代も、ドラえもんの知識は「まじで人並み。筆箱や鉛筆がドラえもんだったレベル」だと明かし、2次審査の出来事は「思い返す度に思い出が色濃くなっていく感じ」と話した。

「僕の人生にとって衝撃的な出来事だったんだなと思います。審査員の方々のお顔、自分が何を言われたか、何をしたかまで覚えている。とんでもない所に足を踏み入れた記憶と、中学生が来る所じゃないという後悔。不安と後悔の中でそこにいたんだけど、不思議と引き下がろうという気持ちはちっともなくて。『来たんだから思いっきりやろ!』という気持ちに変化していましたね」

1次審査は名前や年齢、所属を伏せた上で声だけを審査。劇団日本児童に所属していた木村には「子役のみんなで争うという先入観」があったという。

「奇跡的に中学生とバレずに2次に進出した。子役の性(さが)というか、子役が行くオーディションには子役しかいないので、スタジオに着いて『うーわ…みんな大人!』って(笑い)。2次審査はジャイアンが8人いて、どうせ落ちるなら華々しく落ちてやろうという気持ちが芽生えて、部屋の中を走り回って『おい、待て! のび太~!』ってやったんです。案の定『声優のオーディションだからマイクの前から動いたら駄目でしょ』って怒られてもう終わったと思いましたね。後悔はなかったんです。そしたら、まさかの“3次審査にお越し下さい”でしたね」

★桜木花道で自信

声優デビュー後、多くのアニメ作品や映画の日本語吹き替え版に出演。「エンドロールを見るまで昴だとわからなかった」と言われることが一番うれしいという。

「声優には、お決まりボイスが重宝されるタイプ、いろんな声が出せる器用なタイプがいる。僕が一番尊敬する(ドラえもん)スネ夫役の関智一さんはアニメによって全然声が違う。そういう人に憧れます。僕のこの声が重宝されるより、昴にお願いしておけばなんとかなると思って欲しい。いろんな声でキャラクターが出来るという気持ちが満たされる方が僕は好きです。まだまだ力が足りない部分もあるけど、全てのキャラクターの声を変えてやりたい思いもあるよね」

22年公開の映画「THE FIRST SLAM DUNK」(井上雄彦監督)では桜木花道の声優を務めた。

「改めてこの作品を作る時に『今回は木村君によろしく』という経験を人生で2度も出来ることがありがたくなって。アフレコに2年以上をかけて、井上監督とやり切った自信もあった。映画の内容を言わない前代未聞のスタイルは心の中で、『見終わったら井上監督、黙っていてくれてありがとうって思うから』って思っていました」

クラスの人気者になりたくて「ドラえもん」オーディションに参加した木村。多方面で大活躍する現在も根底は変わらない。

「当時は同級生にちやほやされたいし、すごいって言われたいという思いが強かったんですけど、いまだにベースは“お前はすごいな”って言われたいことが全ての原動力だと思います。大人になってわずかに変わったところは…モテたい。学生時代にはなかったんだけどね(笑い)。理想のタイプ、きむすばと結婚したい、付き合いたいって言われたい。ただそれだけの原動力でここまで来たのすごいよね? 全力を出したら誰にも負けない自信はあるんです」

★10分番組で伝説

「木村昴の-」は、リスナー、スポンサーと一体になり、打ち切りとは無縁の超人気ラジオ番組を目指して10月にスタートした。

「自分の名前が付いた番組が始まることは本当にうれしい。そこを目標に頑張っている部分もあるので、かなったときはうれしかったです。伝説になる、もしくは長寿で続く番組にしたいという決意が生まれて。本気でやっています」

幼少期からラジオを聞き、思い出も数多くある。特に「テレビとは違う温度感が好き」という。

「親に聞かせられないラジオを布団をかぶりながら聞いたり、お母さんがいない時間に聞く経験がすごく思い出に残っています。テレビじゃ言えないことが言えるイメージ。僕のコンセプトは『コンプラゴリ守り声優』でやっているので、コンプライアンスを守りつつ言いたいことも言えるかな? と思うと、ラジオはオアシス的な場所です」

ラジオのトークは事前に準備をしない。意外にも気にしすぎる性格だという。

「こう見えてメンタルはティッシュなんで(笑い)。基本的に失敗したと思いたくない。準備しなければ、そう思わずに済むし、思ったよりうまくいったという気分になれるので、何事も準備しすぎないことがスタンスです。ラジオのトークはメモはするけど、構成などは向かわずに。頭に入れておくだけで、見返したりはしないんです」

スタートから約1カ月半。「はっきり言うと、手応えしかない」と自信満々だ。その理由は2つあった。

「敏腕作家がいますから面白いことが底を突きそうにない未来は見えています。誰もやっていないことに挑戦したいので、それを探すのが楽しくて実現させたい。そして何より、俺がめっちゃ楽しい。スケジュールにラジオが入ると喜んでいる自分がいる。“聴いてくれないと打ち切り”というギリギリ感も仕事になかった感覚で、生活の一部になり始めているので手応えを感じざるを得ないですね」

インタビュー中、幼少期をちゃめっ気たっぷりに再現したり、どんな質問も熱く語ってくれた木村。最後に“10分のラジオ番組”へ懸ける思いを語った。

「最初から順風満帆じゃない。わずかなチャンスを確実につかんでモノにしていく根性、ハングリーさでは他の番組に負けてない。10分で見せます、俺たちの本気を。わずかなチャンスがあったら即つかむ精神で。いつの日か絶対大きな花を咲かせると信じて種をまいています」

▼TBSラジオ「木村昴の聴いてくれないと打ち切り」を始め、木村が出演する番組で構成を担当する放送作家のおいちゃん氏

実は昴くんと私は、いろんな現場で一緒だ。そのどの現場でも、昴くんは常に笑顔。もちろん仕事も、いつも期待を超えてくる。私は放送作家になり25年以上たつが、こんなにもエネルギーあふれるすてきな人に出会ったことがなかった。だから私はある日、恥ずかしながらも昴くんに聞いてみた。「残りの作家人生、昴くんにかけてもいいかな?」と。その時の昴くんの笑顔、一生忘れません。スバちゃん、今後もよろしくね!

◆木村昴(きむら・すばる)

1990年(平2)6月29日、ドイツ生まれ。02年、ミュージカル「アニー」の出演でキャリアをスタート。05年よりテレビ朝日系テレビアニメ「ドラえもん」でジャイアンこと剛田武の声を担当し、声優デビュー。「輪るピングドラム」「暗殺教室」「ハイキュー!!」「呪術廻戦」などで声優を務める。俳優として、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」「どうする家康」に出演。20年からテレビ東京系「おはスタ」のメインMCを務める。183センチ。

◆木村昴の聴いてくれないと打ち切り

レギュラーになったのに、崖っぷち! 木村昴がリスナー、スポンサーと一体となり打ち切りとは無縁の超人気ラジオ番組になることを目指す番組成り上がりドキュメント。TBSラジオで毎週金曜午後5時50分放送の10分番組。

初のラジオ冠番組「木村昴の聴いてくれないと打ち切り」の収録に臨む木村昴(撮影・江口和貴)
初のラジオ冠番組「木村昴の聴いてくれないと打ち切り」の収録に臨む木村昴(撮影・江口和貴)