歌手で女優の菊池桃子(55)が、17日に40周年記念EP「Eternal Harmoney」をCD発売する。誕生日前日の来月3日には東京・キリスト品川教会グローリア・チャペルで「菊池桃子 Special Live“EMERALD”~40th Anniversary&Birthday~」を開催する。1984年(昭59)3月に主演映画「パンツの穴」で女優デビュー、同年4月「青春のいじわる」で歌手デビューした。スーパーアイドルから今までの40年の足跡を振り返り、これからを語ってもらった。【小谷野俊哉】

★和訳“永遠の調和”

17日発売のEP「Eternal Harmony」には新曲3曲が歌入りとインストルメンタル、計6曲が収録されている。

「『Eternal Harmony』。日本語に訳すと“永遠の調和”というような意味があります。音楽活動をさせていただく時には、改めて自分1人だけではできない、ファンの方々やスタッフが一緒に作り上げてくれたことを強く感じます」

「Starry Sky」は自身で作詞、作曲した。

「作品というものは永遠に残り続ける。私自ら形にすることで、より私自身という存在が永遠に残ればいいなという思いがあります。作曲はピアノで自分で最初に作ります。そこにドラムとかベース、ギターの音も、自宅で仮のアレンジで自分で入れます。メロディーは、自分でラララで歌っているバージョンとメロディーをキーボードで弾いているバージョンを、まずスタッフに届けてという感じです」

編曲は84年のデビュー曲「青春のいじわる」からの付き合いになる作曲家林哲司氏(74)に頼んだ。

「林先生の存在って、音楽だけじゃなく生きざまそのものがかっこいい。曲にも林先生のパーソナリティーが反映されていて、とってもエレガントにアレンジしてくださいました。5月3日のライブも、場所が教会なので音の監修を林先生にお願いしました。教会で鳴らすということを考えて、アレンジも楽器もオリジナルとはちょっと違ったものになると思うんです。サブスクとかCDでは聴けない音を、ぜひ楽しんでいただきたいと思います」

★スカウトは中2時

15歳でデビューして40年。

「改めて40年を思い起こすと、たくさんの聴いてくださる皆さん、スタッフに愛をいただいたなという思いがあります。40周年のアニバーサリーイヤーは、この1年を通して皆さんにいただいていた愛をお返しするような、そんなイメージでライブも楽曲制作もしていきたいと思っています」

中学2年の時に、東京・青山の叔母が経営する飲食店に飾ってあった写真を見た芸能関係者にスカウトされた。

「芸能界のことは全く考えていませんでした。考古学者になりたかった。でも当時は14歳で、ちょっと反抗期。門限とか行動範囲とか父がうるさかったので、自分1人でもう少しできるっていう思いがあったんです。それで、もともと強く希望していたわけでもないのに、ポンと芸能界に飛び込んでしまった。ピアノは5歳からやってましたけど、歌うとか、踊るとかっていうことを熱心にやってきたわけではないので、これから努力が必要なんだなって思いました」

映画主演デビューの翌月にアイドル歌手デビュー。

「デビューしたのが高校1年生の4月。戸板女短大を卒業するまでの5年間は、平日は昼間は学校で夕方から仕事、休日はフルに仕事。若いからギリギリ体力が、ついて行った。今考えると、時間の計算が合わない。いつ寝てたんだろうって思うほど忙しかったです。でも、引き受けたからにはきちんとやりたいと思っていて、逃げたい気持ちはなかったです。いろいろなことができる人になりたい、マルチプレーヤーの器用さに憧れていました」

★芝居と歌変わらず

アイドル時代のヒット曲、そしてロックバンド「ラ・ムー」時代の楽曲が、今になって日本のシティーポップスブームの中、再評価され世界中で聴かれている。

「配信、サブクスの時代になって、聴こうと思ったらすぐに聴けるので年代は関係ない。何年の何月何日にリリースという、捉え方は古くなっているのかなと思います。その曲を聞いた日がスタート。配信が広がっていって、余計に音楽は簡単に時を超えるということを思い始めました。デビューアルバムの『OCEAN SIDE』、それに続く『TROPICAL of CAPRICON~南回帰線~』、『ADVENTURE』、あとシングルで『Starlight MovEment』とか。そのあたりの林哲司先生が作ってくださったアイドル時代のアルバムの曲も、配信ですごく外国の方が聴いてくださっているみたいです」

音楽は時空を超えて、聴かれ続ける。

「今は元気で仕事をさせていただいてますけれど、いつか命が終わっても楽曲は残り続けるんだということを、配信がメジャーになってから強く考えるようになりました。そうすると、今回のタイトルにつけた『エターナル(永遠)』というのは、キーワードになってきた。心に止めなきゃいけないことだなって思っています」

曲を自分で作るのは運命だった。

「人生って本当に神様がストーリーを書いてくださっているのか、よく分からない。だけど、5歳の時に通い始めたピアノ教室は、発表会の時に練習曲と同時に、拙くても自分で作曲をしたものを披露させられたんです。ですから、5歳の時に初めて作った曲なんて恥ずかしくて笑ってしまうんですけれど、そういう訓練が偶然にできていたんです」

女優として映画「パンツの穴」でデビュー。そしてトレンディードラマで活躍した。

「元々は映画『パンツの穴』の女優デビューと『青春のいじわる』の歌手デビューが同じ春。だから、お芝居も歌も両方できるといいなと、ずっと思っていました。高校と短大の時は単位を取らなくちゃいけないから、お芝居をやりづらかった。今では芸能活動も単位と見なしてくれるような高校とか大学があるけど、私の頃、特に私の入った学校は授業に出ないと試験も受けられませんでした。だから戸板女短大を卒業してからは、お芝居にも時間が使える喜びが大きかったです。でも、ドラマ作りって、睡眠時間を確保するのが難しくくらい体は大変でした。私にとって、お芝居も歌も、表現するという意味では変わらないです」

★子どもが再婚後押し

2009年(平21)1月から、テレビ朝日系ドキュメンタリー番組「人生の楽園」でナレーター。11年7月からは文化放送「菊池桃子のライオンミュージックサタデー」でパーソナリティーを務める。

「楽しいですね。レコーディングとか新曲を出すことは、子育てとか大学院に行ったりしてブランクがあったんです。そういう風に音楽から離れていた期間も、ずっとナレーションとかラジオを通して、自分の声をいつも確認していたんです。だから、歌ってないけど、声を出すのは似ていて良かったと思っています。あと、レギュラーで毎回録らなくちゃいけないと思っていると、自分の体調をそれに向けて管理する習慣がついて喉も常に大事にしてきました。とてもプラスになっています」

40周年を迎えて、さらに芸能活動を深めていく。

「気持ち的には、すごく楽しい。今は本当に自分が挑戦したいことをやらせていただくっていう状況。子供は2人とも成人して、私を手伝ってもくれます。そして同世代の方たちと同じように、介護問題にも直面しています。私のファンの方って、同世代の方々が今もなお応援してくださっているっていうケースだと思うんですけれど、同じように人生を歩んで経験して、今がある。今また音楽を楽しむことができているので、私にとって不必要なものはなかったと思っています」

5月4日には56歳になる。“人生100年時代”も折り返しを迎えている。

「残念なことに、同級生が突然病気で亡くなったりとか、そういう経験をしています。ロボットじゃなく生身の人間ですから、いつまでもやるということをイメージできるか考えると、やっぱり今を一生懸命生きるっていうことの方が自分にとっては大事なこと。今年は40周年だけど、41周年はできないかもしれない。そう考えると、今を大切にすることが大事だと思います」

19年11月に再婚した。その結婚を後押ししたのは、2人の子供だった。

「おかげさまで今、本当にすごく幸せですね」

アイドル時代と変わらない、いやそれ以上の笑顔を見せてくれた。

▼「Eternal Harmony」の楽曲「もうすぐ0時」の作詞・作曲・編曲担当のandrop内澤崇仁

菊池桃子さんデビュー40周年という記念すべき瞬間に携わらせていただけることを大変光栄に思います。桃子さんの素晴らしいお人柄に触れ、多くのことを学びながら制作させていただきました。桃子さんとだからこそ作ることができた楽曲です。楽曲を飛び越え、ホリエアツシさん(「星の蜃気楼」作詞・作曲・編曲)とも一緒に取り組めたことも、とても楽しかったです。40周年を祝うこの機会に「もうすぐ0時」もその一部となり、1人でも多くの方に聞いていただけることを心から願っています。

◆菊池桃子(きくち・ももこ)

1968年(昭43)5月4日、東京生まれ。84年、映画「パンツの穴」主演、シングル「青春のいじわる」で歌手デビュー。88年、ラ・ムー結成。89年(平元)、フジテレビ「君の瞳に恋してる!」。92年、映画「パ☆テ☆オ」。93年、フジテレビ「あの日に帰りたい」。12年、法大大学院修了。同年、戸板女子短大の客員教授就任。現在はテレビ朝日系「人生の楽園」(土曜午後6時)、文化放送「菊池桃子のライオンミュージックサタデー」(土曜午前10時)など。160センチ。血液型B。

◆EP「Eternal Harmony」

「星の蜃気楼」(ホリエアツシ作詞・作曲)、「もうすぐ0時」(内澤崇仁作詞・作曲・編曲)、「Starry Sky」(菊池桃子作詞・作曲、林哲司編曲)のボーカル入りとインストルメンタルの6曲入り。

 
 
84年2月、資生堂キャンペーンガールに選ばれ、健康的でかわいいお色気をふりまく菊池桃子
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