宙組の人気スター桜木みなとが、オスマン帝国の皇帝にふんする「オリエンタル・テイル『壮麗帝』」で東上初主演作に臨む。近年多かった敵役を経て、舞台でも、組内でも存在感は増すばかり。「色気」をテーマに「愛される」「恋をさせられる」男役へと誓う。東京(日本青年館ホール)で4月以降(4日まで)、大阪(シアター・ドラマシティ)は同11~19日の上演予定。

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表情に柔らかみが増した。初の東上主演作に「来たなっ! という感じ」。色紙の言葉には「愛」と書いた。「プレッシャー、緊張感はあるんですけど」。気負いはない。物語の時代は16世紀初頭。オスマン帝国を隆盛に導いた皇帝スレイマンを演じる。

「歴史を調べても、奴隷から1人だけを妻にして、右腕の彼もまた奴隷あがり。しきたりの多いハレムで…。カリスマ性もある」

革新的な人物像。だが政治の流れは、信頼していた部下との絆も壊していく。「歴史書のような書物、(同時代の)漫画も読み、海外ドラマも見ました」。衣装写真は強い目力が印象的だ。「一瞬でエネルギーを感じられるよう」と意識した。共感する点も多い。

「代々の慣習で、子孫を後継者1人だけにする。最も優秀な息子にしようと、側室が息子を競わせる。彼(主人公)も、仲のいい兄を殺され、トラウマを持っている。だから心優しい」

文化の発展に尽力するが、時の流れから冷酷さものぞくようになる。前後半で見せる“2つの顔”がある。本拠地作で敵役を2作続けて演じた経験が生きる。

「最初の『心優しき皇帝』が、新鮮すぎて! 近頃は砂をかけたり、ひきょうなことをしすぎて。『まっさらな殿方』は久しぶり(笑い)。敵役は出た瞬間に空気を変え、マウントをとれるか。お客様からの注目度もグンと上がり、責任を感じていました」

敵役は芝居を締める重要なポジション。組内で序列が上がったゆえでもある。

「舞台上で『自分に負けない』。存在感を『ガンッ』と出せるように。応援してくださるお客様に喜んで、楽しんで、宝塚らしくときめいてもらおうって、意識が変わりました」

中でも、昨年の「オーシャンズ11」で演じたベネディクトが大きかった。

「できないと思った。でも、その時点で負け。(演出の)小池(修一郎)先生に、しごいていただきました。舞台でも、芹香(斗亜)さんと日々、アドリブ合戦があって試練でした」

後輩への接し方も変化し、性格は「人見知りがなくなった」と笑う。リフレッシュ法を聞くと「スイッチが切れることがなくなった。家に帰ってもわりとそのまま。集中しきっていることが楽しい」と話す。

星組新トップ礼真琴、花組新トップ柚香光はともに同期。「昔は置いて行かれているような気がして、焦っていた。でも、自分には自分のタイミング、やり方がある。『遅い』『早い』とかないって思えるようになりました」と明かす。

今年のテーマは「愛される男役」。今公演では「色気」を求められている。

「下級生が多く、そういう面も引き出したい。男役たるもの、恋をさせられる男役にならねば。『男役・桜木みなと』を磨きたい。魔法にかかったように、お客様にときめいていただくのが、私たちの仕事」

覚醒したスターの決意表明。すがすがしさが漂っている。【村上久美子】

☆桜木みなと(さくらぎ・みなと)12月27日、横浜市生まれ。09年入団。宙組配属。14年11月「白夜の誓い」で新人公演初主演。15年10月「相続人の肖像」で宝塚バウホール初主演。前々作「オーシャンズ11」はベネディクト、前作「エル・ハポン」は領主の息子役で、ともに敵役。身長170センチ。愛称「ずん」。

◆オリエンタル・テイル「壮麗帝」(作・演出=樫畑亜依子) オスマン帝国最盛期に、「壮麗帝」と称された皇帝スレイマン(桜木みなと)の生涯を、寵姫ヒュッレム(遥羽らら)との愛や、義弟にあたる大宰相イブラヒム(和希そら)との絆を通して描く。

16世紀初頭のオスマン帝国。9代皇帝セリム1世の息子スレイマンは、腹心の友イブラヒムと隠密で街へ出て、奴隷として売られたアレクサンドラと会う。皇帝は崩御し、スレイマンは10代皇帝に。アレクサンドラを皇帝のハレムに迎え、ヒュッレムの名を授ける。