花組トップ娘役華優希は、理想とする王道娘役像「かすみ草」の集大成として、退団公演「アウグストゥス-尊厳ある者-」「Cool Beast!!」に臨んでいる。トップ柚香光がローマ史上初の皇帝にふんした芝居では、父の敵討ちに燃える娘を演じる。兵庫・宝塚大劇場は26日から休止も、5月10日千秋楽は無観客上演とライブ配信が決定。東京宝塚劇場は5月28日~7月4日の予定。

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好きな花に「ポーの一族」でもゆかりのバラとともに「かすみ草」をあげた。

「(宝塚)音楽学校の頃から『娘役はかすみ草でありなさい』との言葉が私の中にあり、ずっと大切にしてきたことでもあります」

かつてOGの女優黒木瞳も「ファンの方は、娘役に自分を投影して、男役さんを、舞台を見る」と話していた。華は娘役の神髄を「かすみ草」と考え、就任時から「男役さんの横でぽっと咲いている花に」と目標を掲げていた。

「ファン時代、男役さんに寄り添ってらっしゃる娘役さんの姿が好きで、夢があると感じていました。我を出すのではなく、芯をしっかり持って男役さんのそばにいれば、2人が輝き、多幸感あふれる関係性が見える。今まで以上にそれを意識して務めたいです」

宝塚最後の舞台、「この時間を絶対に忘れないでおこう」と意識する。19年4月、前花組トップ明日海りおの4人目相手娘役に迎えられ、横浜アリーナでお披露目となった。明日海の退団後、柚香光の相手役に就き、本拠地3作で退く。

「(自粛中に)考えをめぐらせ、基礎を見直し、柚香さんの思いも聞けました。今も、自分の中の殻があるなと思いますし、それを破ることに最後まで挑戦し続けたい。明日海さん、柚香さんから教えていただいたことは、大きな成長に。2人のすばらしい男役さんに本当に感謝しています」

寄り添う意識が強いあまり、引きすぎてしまわないように。明日海、柚香らに導かれ「自分自身がどう舞台に立ちたいか-。ここが一番、破りたい殻」と考え、取り組んでいる。

今作の芝居では、父の敵討ちを誓い憎しみに支配されていた心が、柚香演じるオクタヴィウスと出会い、人のぬくもりを思い出す。

「感情がすぐ出るような役が多く、今回は自分の中で考えをめぐらせ、複雑で難しい面があります」

華自身は「言動にすぐ出るタイプではない」。最後にして、新たな挑戦。その中で、明日海、柚香と、前トップ娘役仙名彩世からの言葉を思い起こすという。

「技術面で磨くところもたくさんありますが、根本にあるのは心。(3人から)『宝塚で一番大切なのは心』と、学ばせていただいた。宝塚を去る時期が近づき、やっぱり娘役、宝塚が好きなんだと思います」

次代へと歴史を紡ぐ後輩へも原点を説く。

「あれが、これができてない-そう、思うんですけども、なぜ自分は宝塚に? と思い出せば、自分がどうしたいのか、お稽古の時間はどう積み重ねればいいのかが見えてくる。壁に当たった時には、宝塚を、娘役を愛する気持ちを思いだしてくれたら…」

花組一筋。配属初日に上級生からかけられた言葉は宝物だ。「(先輩娘役から)『あなたたちは今日から“花娘”なんだよ』と声をかけていただき、すごくうれしくて」。こだわりを持つ花組娘役「花娘」の先輩を見て、学びを重ねた。

「舞台での踊り、歌…おけいこ場での髪形、かつら、アクセサリーも、どこを見てもすきがないくらいのこだわり。男役さんをすてきに見せたいと心から思うことで、すてきに見えていた。花組娘役として学ばせていただき、幸せでした」

歩みを振り返れば、周囲へ感謝が尽きない。次期トップ娘役は、宙組トップ娘役から専科を経て就く同期の星風まどかに決まった。

「星風は、私が就任させていただく前から、宙組の主演娘役として、堂々と務め上げている姿を見てきたので。花組の娘役として務めていくことに安心感もあり、頼もしくも思います」

自身の理想像「かすみ草」を極め、同期にバトンを託す。【村上久美子】

<華は「花」に>

柚香らが野獣にふんするラテンショーで、華は「花」にふんする。「お衣装の違いだけじゃなく、どう花として表現すればいいか。つややかな花、少女のような花、君臨する女王のような…場面によって、いろんな花、色を」と言い、宝塚最後のショーを務める。

◆ドラマ・ヒストリ「アウグストゥス-尊厳ある者-」(作・演出=田渕大輔) 「アウグストゥス(尊厳者)」の称号を贈られたオクタヴィウスが、ローマ史上初の皇帝へ就くまでを描く。カエサル(夏美よう)の腹心、アントニウス(瀬戸かずや)ブルートゥス(永久輝せあ)らとの対立を経て「パクス・ロマーナ(ローマの平和)」へ至る。カエサルを「父の敵」とねらうポンペイアを華優希が演じる。

◆パッショネイト・ファンタジー「Cool Beast!!」(作・演出=藤井大介) トップ柚香の個性のひとつが「野性的な色気」。柚香らは「野獣」、華は「艶花」、瀬戸は「人間」にふんする。

☆華優希(はな・ゆうき)11月13日、京都市生まれ。14年入団。花組配属。15年台湾公演に最下級生で参加。17年に新人公演初ヒロイン、同年には柚香主演の「はいからさんが通る」もヒロイン。18年「ポーの一族」ではトップ明日海演じる主人公の妹に抜てき。19年4月にトップ娘役に就き、横浜アリーナでお披露目。身長162センチ。愛称「はなちゃん」「のぞみ」。