三笘薫。2021年1月に本コラムで女優の伊藤沙莉を取り上げる際に、とにかくすごいけど名前の読み方がなかなか覚えられないと紹介した。

当時は川崎フロンターレに所属し、まだまだ全国区ではなかったが、今となっては誰もが「みとま」と読むことができるのではないだろうか。

少し下に久保建英がいるが、今期のプレミアリーグでの活躍から、中田英寿や中村俊輔、さらには本田圭佑や香川真司といったいわゆるレジェンドたちと肩を並べるどころかすでに超えているのかもしれない。特に左サイドから仕掛けるドリブルは世界TOP10入りしていてもおかしくない。今後ビッグクラブの話もあり、ますますサッカーファンに夢を与えてくれる存在であろう。

そこで、今回紹介するのは三笘の兄であり俳優の結木滉星。現在、月9ドラマの「風間公親-教場0-」に出演中。若手刑事を見守る捜査第一課の刑事としてレギュラーで登場する。

兄弟であることが判明したのは、本ドラマの番宣中のバラエティー番組。クイズの解答中にふと「結木くんの弟は三笘選手なの?」と聞かれ、「はい」とあっさりと答えていた。周りはびっくりしていたがそこまで騒ぐことなく次のコーナーに。どことなく似ている眉や目元から納得した視聴者も多かったはず。以前からネットではうわさになっていたみたいだが、出身や名字が違うことから別人ではとの結論に至っていた。

改めて、結木滉星。高校生の時にスカウトされて芸能界デビュー。舞台「ハイパープロジェクション演劇ハイキュー!! “進化の夏”」で注目を集めた後、2018年のスーパー戦隊シリーズ「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」で主演を務める。

2018年といえば三笘はまだ大学生、ということは兄の方がだいぶ早く全国区のヒーローになっていたこととわかる。実際この頃に知り合いのプロデューサーから、今一番勢いのある俳優として名前を聞いたことがあった。その後も出演作品は続き、人気俳優の登竜門となっているライダーや戦隊出身の俳優の中でもかなり順調な部類といっていいだろう。

そこにきて弟がすごい勢いで有名になる。事務所や本人からしてみたら、着実に積み上げてきた俳優としてのキャリアを無視して、ゴリ押しの2世俳優みたく紹介したくなかったのではなかろうか。かといってこれ以上隠しておくのも変なので、このタイミングであのような公表になったのかもしれない。弟の人気に便乗せず、兄の俳優としての価値も十分に考慮されていて、とても好感が持てた。

思えば三笘の特徴であるドリブルもうまく相手のタイミングをずらすことでスイスイと相手を抜き去るものである。異業種ながらどちらもスターになる可能性のある才能豊かな兄弟、2人の今後の活躍に大いに期待です。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。昨年11月には俳優藤原大祐主演の最新映画「追想ジャーニー」が公開、今年3月には演出舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ2」も上演した。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)