日本人の海外進出。スポーツ界では、大谷翔平に三笘薫、久保建英とこれまでの記録や記憶を塗り替えられそうな逸材たちの宝庫である。かたや俳優業界はまだまだ厳しい。先日取り上げた忽那汐里は健闘していると言えるが、その他であれば映画「ラスト サムライ」の時からそこまで状況は変わらず、日本人俳優といえば渡辺謙に真田広之がいまだ有名である。満を持してチャレンジした小栗旬ですら目に見える結果を残せなかったことを考えると、日本人俳優が世界のトップに立つのはまだまだ先ではないかと思う。
そのような状況だが、若い俳優の中には日本でのキャリアをすっ飛ばして海外にチャレンジする者もいる。アイドル文化が成熟していることもあり、なかなか演技力だけで勝負できずに活躍の場を海外に求めるというもの。
一応いらぬアドバイスとして、漫画「スラムダンク」を読むことを勧めている。流川がアメリカに行きたいと言った時、安西先生が放った「日本一の高校生になりなさい」という一言。内容はそのまま、日本一になってから世界にチャレンジしてみては? というもの。もちろん軽く無視して旅立っていくが、その後の活躍を聞いたことはない。
さらにもうひとつ。巨匠と呼ばれる日本人監督が、日本人は海外で通用しないとどこかで発言していた。鼻が低く彫も浅いその姿では外国人に勝てるわけがなく、だから格好をつけるのではなくコメディーをやれと。広く長く愛された「男はつらいよ」シリーズなどを例えに出せばわかりやすいのかもしれない。かなり乱暴な見方かもしれないが「パイレーツ・オブ・カリビアン」を見て、オーランド・ブルームの役を日本人ができるのだろうかとも思ってしまう。いや、何かすいません。
否定的な例えばかりで恐縮だが、先日とある映画を見ていてその考えが変わった。映画は昨年公開された「ヘルドッグス」、目についたのは主役の岡田准一でも坂口健太郎でもなく、ヤクザの若きトップを演じていたMIYAVI。肩書はロックミュージシャン、最初に見たのはSMAPへの楽曲提供の際に共演していた時であろうか。
昨年末の紅白にもYOSHIKI率いるTHE LAST ROCKSTARSのメンバーとして出場。俳優としてはなぜかアンジェリーナ・ジョリーに発掘され、すでにハリウッドデビューしている。
まずはその圧倒的な存在感。スタイルがいいのもあるが、そのたたずまいや雰囲気から、日本の枠には収まらず世界で活躍できるのではと期待させる何かがある。「ブラック・レイン」の時の松田優作とまではさすがにいかないがどこか近いものを感じた。
最近ではLDHと国内マネジメント契約を結んで年に1本のペースで出演しているようだが、もっとたくさんの作品で見たい。国内外を問わず今後の活躍に大いに期待です。
◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。昨年11月には俳優藤原大祐主演の最新映画「追想ジャーニー」が公開、今年3月には演出舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ2」も上演した。
(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)





