バイプレーヤー。ドラマや映画において主演ではなく助演や脇役を指す用語である。視聴率や興行成績を背負う主演と違い、比較的自由度のあるポジションなこともあり憧れる俳優も多く、息の長いのも特徴である。少し前だが、ドラマのタイトル(「バイプレイヤーズ」)にもなり、以前より注目されているのは確かであろう。

しかし、オーディションで若くしてバイプレーヤーになりたいと答える俳優とはあまり仕事がしたくない。あくまで配役を決めるのは演出側であり、キャスト側は常に主役を目指して欲しい。野球だと最初はみんな4番でピッチャー、そして年数を重ねていく中でそれぞれのポジションに振られていくものである。

話はそれたが、今回紹介するのは多くのドラマや映画で活躍する矢本悠馬。子役出身で、とにかく役の幅が広い。主演作ももちろんあるが、彼が脇で出ていると作品としての安定感がすごい。ちなみに年は少し違うが、森永悠希、岡山天音あたりも作品にはずれがない。彼らが出ているだけで一度観てみようと思わせる何かがある。

恒例のサッカーに例えると、先日終わったユーロで準優勝したイングランドの中盤のメイヌーを想起させる。前線のケインやべリンガムといったスーパースターたちの後方できっちりと自分の仕事をする。また、展開に応じてプレーできることから監督から見たらメンバーの中に一人は欲しい選手ではないだろうか。

改めて矢本悠馬、最近見た中だと、映画「ゴールデンカムイ」の白石役が抜群によかった。緊迫感のあるシーンが続く作品の中、コメディーパートの大部分を任されるのだが、ここでもきっちりと仕事をしていた。見た目だけを似せるのではなく、全身で演じることで、皆が想像した白石がそこにいたのではないかと思う。現在33歳、俳優として本格化するのはまだまだこれから。メイヌーがポスト・スコールズと言われているように、阿部サダヲやムロツヨシみたく数年後には主演している可能性が非常に高い。これからの活躍に大いに期待したい。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて南青山でカレー&バーも経営している。最近では映画「その恋、自販機で買えますか?」「映画 政見放送」、10月18日には映画「追想ジャーニー リエナクト」が公開予定。