大正製薬「リポビタンD」CM「日本への熱き想い」編
大正製薬「リポビタンD」CM「日本への熱き想い」編

初のW杯8強入りを果たしたラグビー日本代表の快進撃に列島の注目が集まる中、ラグビーをテーマにした企業CMの見応えも大きな話題になっている。「力作ぞろい」「かっこいい」「感動的」とネットの反応も熱く、CM総合研究所も「ラグビーの魅力をさまざまな視点で表現している」と評価している。

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01年からラグビー日本代表をサポートしてきた大正製薬の「リポビタンD」は、目標に向かって挑み続ける選手の姿にフォーカスした王道スタイル。ほかに、ビジネス街の日常風景にラグビーを掛け合わせた三菱地所や、外国の村を舞台にした感動作のクボタ、日本ラグビーの歴史をモノクロ映像で描いた三井住友銀行など、さまざまな作風のCMがラグビーを盛り上げている。試合中継のスポンサー企業はもちろん、番組を指定しないスポットCMを含めるとその数は2ケタにのぼる。

クボタCM「Try For Dreams.」編
クボタCM「Try For Dreams.」編

各社CMについて、CM総合研究所広報部では「シリアスからコメディーまでバラエティーに富んでおり、趣向を凝らしたクリエーティブが目立つ。仲間との友情や、価値観の違いを認め合う多様性を描くものなど、ラグビーの魅力をさまざまな視点で表現している」と評価する。

また「リポビタンDのCMが象徴するように、懸命な努力と試合にかける思いといううそのない姿が、白熱したプレーと相まって視聴者の心を動かしたのではないか」。近年のテレビCMは「キレイなこと」よりも「本当のこと」が消費者の心に刺さりやすい傾向があるとし「ALL FOR ONE、ONE FOR ALLというラグビーの精神も、和を重んじる日本人が共感しやすいテーマなのかもしれません」と話す。

三菱地所CM「新しい匂いのする街 丸の内のラグビー熱」編
三菱地所CM「新しい匂いのする街 丸の内のラグビー熱」編

各社、CMを制作したころは人々のラグビーへの関心がまだ低く、「競技の魅力を知ってほしい」というところからのスタートだった。

低迷期からサポートしてきた大正製薬は「魅力的なスポーツであるものの、ルールも難しく、お世辞にもとっつきやすいとは言えません」とし、競技や選手の魅力から興味を持ってもらえるよう企画を進めたという。「こんなに激しいスポーツを、なぜこんなに頑張るのか、理解、共感してもらうため、分かりやすいストーリーを持った日本代表選手のメッセージに焦点を当てました」。三菱地所も「絶対にW杯は盛り上がるはず! という未来予測とはほど遠く、ただただ熱い思いをもって広告代理店さんに企画していただきました」と振り返る。

AIG損保CM「Tackle The Risk」
AIG損保CM「Tackle The Risk」

それだけに、初のベスト8入りで中継の最高視聴率が53・7%を記録(スコットランド戦)する盛り上がりに喜びもひとしお。「CMは、素晴らしい選手とスタッフ、すべてのファンの方々の存在によって完成したと言えると思います」(三菱地所)。

国民的関心の高いスポーツイベントの中継番組は多くの人がリアルタイムで視聴するため、CMにも大きな注目が集まる。CM総合研究所では「SNSでライブ感を共有しながら楽しむ人が多く、CMへの好意的な感想が拡散しやすい。デジタルとリアルを掛け合わせた“その瞬間の共有”が、社会現象を生むポイントになっている」と話している。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)