4月改編説明会を行ったテレビ東京大庭竹修編成部長の言葉です(8日)。

若者層獲得のため各局が高齢者斬り、中高年斬りを推し進める中、「ナンセンス」とばっさり言ったのは刺激的でした。放送界が「コア層」と呼ばれる若者層、ファミリー層の獲得を競う中、あえて「テレ東コア」を打ち出す究極の独自路線。若い人もそうでない人も、「見るものないな、という時にテレ東をつけてもらえるとうれしい」。テレビマン本来のシンプルな願いが新鮮でした。

年齢で客を選ぶのがナンセンスかどうかはさておき、現状、各局は若い視聴者の獲得に必死です。

最も大きな事情は営業面。購買力がある若者層やファミリー層を獲得しないとCM枠が売れない時代。スポンサーのニーズに応えるため、「コア層」の数字を上げようと懸命です。昭和から「視聴率」として親しまれてきた世帯視聴率ではなく、スポンサーや広告業界向けの指標にすぎなかった個人視聴率で番組を評価するようになったのもそのためです。

ちなみに、重点ターゲットやその呼び方は局によって異なり、日本テレビはコアターゲット(13~49歳)、TBSは新ファミリーコア(4~49歳)、フジテレビはキー特性(13~49歳)。ざっくり18年あたりで出そろい、編成の現場はこの層の数字を抽出したコア視聴率を軸にタイムテーブルを作っています。

ここ数年、決して視聴率が悪いわけではない番組や長寿番組が次々と終了しているのは、このコア層の数字が弱いため。まだ世帯視聴率がモノを言った10年くらい前までは、手っ取り早く数字をとれる高齢者向けの健康番組ばかりやっていたことを考えると、隔世の感があります。

世帯視聴率がコア視聴率になっただけで、視聴率は視聴率。韓国が世界戦略によって「国内視聴率は関係ない」を実現させ、予算的にダイナミックなものづくりをしているのと比べると大きな差を感じます。スポンサーの広告収入で利益を回収する日本の商慣習はもはや手詰まり気味。予算の先細りでますますスポンサーの顔色に気を取られ、求められる若者層獲得にてんてこ舞いという印象です。

そんな業界の風潮をテレ東が「ナンセンス」と言えるのは、他局のようなコア層争奪競争から少し離れたところにいるせいかもしれません。他局に比べてそもそもの数字が低く、世帯、個人、コアと分けて計算すること自体がナンセンスな感。群を抜く多さの深夜ドラマ戦略でがっちり見逃し再生を稼ぐなど、若者をつかむところはしっかりつかんでいるというバランス的な強みもあります。

NHKを含め、テレビ局が若者獲得に躍起になるのは、「将来の視聴者」という側面も大きくあります。

YouTubeなどの動画サービス、サブスクリプションの配信サービス、スマホのカジュアル動画アプリなどあらゆる方向から動画コンテンツが手元にある時代。家にテレビがないという若者も多く、このままテレビ離れが加速すると、将来のお客さんがいなくなるという強烈な危機感があります。

テレ東の翌日に説明会を行ったTBS瀬戸口克陽編成局長は、「テレビを見る習慣がなくなった人たちは、将来戻ってきてくれないという危機感がある」。あらためて、4~49歳を重点ターゲットとし、「属性の改善」を進めるとしています。「テレビの方が若者離れをしているのではないか」という自戒も語り、「テレビ離れの若年層の方々にも見ていただけるコンテンツへ体質改善していく。今後もその方針を変えずに闘っていきたい」と話しています。

ちなみにテレ朝は、若年層もシニア層も重視するという「ハイブリッド戦略」の継続を宣言。ある意味、テレ東以上に独特です。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)