Netflix「イカゲーム」シーズン2のキービジュアル
Netflix「イカゲーム」シーズン2のキービジュアル

昨年、世界中で大ヒットした韓国ドラマ「イカゲーム」のシーズン2制作が正式決定し13日、独占配信するNetflixから発表されました。

前作で、ゲーム運営組織の正体を暴くため動きだした主人公ギフン(イ・ジョンジェ)のラストシーンはいかにも続編ありげでしたし、スター俳優のコン・ユがあのまま地下鉄をうろちょろするだけの末端構成員なわけがない…。作品ファンの1人として続編を楽しみにしていたので、正式発表に心躍ります。

◆子どもの遊び×韓国ノワール

「イカゲーム」は昨年9月17日に世界配信され、日本をはじめ世界94カ国で総合1位を獲得。配信4週間で1億4200万世帯が視聴し、当時のネトフリ史上最大の記録を打ち立てて話題になりました。日本でも、「愛の不時着」に続き2年連続で流行語大賞をけん引するトピックとなりました。

ざっくりおさらいすると、生きるも地獄、死ぬも地獄な人物たちが、賞金456億ウォンをかけて“負ければ即死”のゲームに挑む殺りくデスゲームのドラマです。「だるまさんがころんだ」や「ビー玉遊び」など、昔ながらのアナログな遊びは日本人にもなじみがあり、老若男女誰にでもできて、生き残るチャンスは平等と思わせる仕掛けがうまいのです。

1話の「だるまさんがころんだ」で、鬼役の巨大ロボット「ヨンヒ人形」が動いた人の頭をいきなりマシンガンで吹き飛ばし、容赦ないゲームがスタート。子どもの遊びと韓国ノワールのコントラストに面食らううち、人間の醜さ、強さ、美しさを圧倒的なスケールで描いたストーリーに引きずり込まれていきます。パステル調の施設描写など、韓国ドラマの映像クオリティーも大いに話題になりました。

Netflixシリーズ「イカゲーム」独占配信中
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◆「カイジ」?「アリス」?

「だるまさんがころんだ」の展開が映画「神様の言うとおり」(14年)のまんまであるとか、富豪が貧者をもてあそぶ「鉄骨渡り」が「カイジ」に似ているとか、類似性の指摘も多くあるところです。日本マンガの大ファンであるファン・ドンヒョク監督は「カイジ」などからモチーフを得たようですが、肝となるテーマ性はまったく違うという印象です。

貧困や差別、社会的弱者の置かれた状況というリアルが徹底して描かれ、456億ウォンの大金にすら夢も希望もない世界観は独特です。「誰が、何の目的で」もしっかり明かされ、黒幕と主人公ギフンの対決も大きな見どころとなります。必ずある攻略法を見つけ、時にはチームワークがカギを握る「カイジ」や「ライアーゲーム」のような理系の痛快さとは無縁です。

国産のNetflixオリジナル「今際の国のアリス」(20年、主演山崎賢人)と比較する声も多いですよね。親友同士を戦わせるなど、人の心をもてあそぶゲームの悪質さはどちらも同じですが、物語の設定はことごとく逆です。「アリス」は、ある日突然ナゾのゲーム世界に放り込まれた高校生が、元の世界への戻り方も分からない中で希望を見つけていく成長物語であるのに対し、「イカゲーム」は自らの意志で参加した456人の欲望と、絶望しかありません。

◆女性キャラがかっこいい

見ていて最もつらく、この作品の真骨頂ともいえる「ビー玉遊び」では、女性キャラたちの透き通るような名場面を見せてくれました。

脱北して幼い弟を抱えるセビョク(チョン・ホヨン)と、そんな彼女を「勝たせてあげる」というジヨン(イ・ユミ)の物語。誰よりも過酷だった2人の身の上と、「勝たせてあげる」の意味の重さに涙腺が崩壊した人も多いのでは。セビョクを演じたチョン・ホヨンは、この作品がデビュー作。いきなり全米映画俳優組合賞(SAG賞)ドラマ部門の女優賞を受賞しています。

Netflixシリーズ「イカゲーム」独占配信中
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◆「まもなく、ギフンが帰ってきます」

で、なんといっても主人公ギフンを演じたイ・ジョンジェの魅力ですよね。「補佐官」シリーズなど、高級スーツをバリッと着こなすクールなイメージがあったので、借金まみれのボロボロなおっさんぶりにびっくり。どんな役柄も説得力をもって演じる韓国俳優界のすごみを感じます。ゲームに生き残り、望まない賞金456億ウォンと引き換えに大事なものを失ってしまったジフン。組織と対決するため、メラメラと立ち上がったところからのシーズン2となります。

運営側のフロントマンを演じたレジェンド俳優イ・ビョンホンや、地下鉄でめんこをして貧者を勧誘する「トッケビ」のコン・ユなど、豪華すぎるキャストがどう展開していくかも気になります。ドンヨク監督は「まもなくギフンが帰ってきます。フロントマンも帰ってきます。スーツ姿のめんこ男にもまた会えるかもしれません」「まったく新たなゲーム、最高の物語を用意して皆さまをお待ちしています」とコメントしています。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)