大ヒット韓国ドラマ「梨泰院クラス」(20年)をリメークするテレビ朝日系「六本木クラス」(主演竹内涼真、木曜午後9時)があす7日からスタートします。「愛の不時着」と並ぶ“第4次韓ドラブーム”の金看板が日本版でどう描かれるのか、オリジナルの大ファンとしては、ワクワクとヒヤヒヤが半々という心境です。現状、キャストだけは分かっているので、韓国版の魅力を紹介しつつ、注目ポイントをメモしておこうと思います。

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テレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」制作発表記者会見で。左から、香川照之、新木優子、原作者のチョ・グァンジン氏、竹内涼真、平手友梨奈
テレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」制作発表記者会見で。左から、香川照之、新木優子、原作者のチョ・グァンジン氏、竹内涼真、平手友梨奈

「梨泰院クラス」は、ソウルの歓楽街、梨泰院(イテウォン)で居酒屋「タンバム」を始めた主人公パク・セロイ(パク・ソジュン)が、外食産業のトップに立つまでを描いた青春サクセスストーリーです。親も夢も奪った「長家(チャンガ)グループ」会長への復讐(ふくしゅう)を軸に、仲間たちのきずなや恋模様がダイナミックに展開していきます。

梨泰院は外国人が多い繁華街ということで、日本版の舞台は六本木。居酒屋「二代目みやべ」を始めた主人公、宮部新(竹内涼真)が、宿敵・長屋会長(香川照之)率いる巨大外食チェーン「長屋ホールディングス」に下克上を挑んでいく構図です。

すでに話題の配役ですが、全体的にオリジナルのイメージにしっかり寄せている印象です。

まずは主演の竹内涼真さんですが、入り口として見た目に違和感がないのはありがたいところ。この物語をパク・ソジュンさんで見慣れてきたこちらにとって、本家と同じような長身で、序盤の拳がちゃんと重そうに見えるのは助かります。セロイと同じ“いがぐり頭”もなじんでいますよね。

テレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」制作発表記者会見で意気込みを語る竹内涼真
テレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」制作発表記者会見で意気込みを語る竹内涼真

とにかくセロイは“歩く人間力”みたいなリーダーシップの持ち主。人生の主体は自分である、というお父さんの教えを黙々と実践していて、目標を立てたら長期計画で前進するひたむきな人です。どんな大ピンチでも信念を曲げない骨太な突破力と、その性格ゆえに痛い目にも遭うもどかしさを、竹内涼真さんが端正な馬力で表現してくれたらいいなと思います。

日本版の内容にもよりますが、原作通りなら、注目は店のマネジャーとして二人三脚の経営をしていくことになるヒロイン、葵(平手友梨奈)とのコンビ性ですよね。画面からどれだけ魅力的な男女の関係性が匂い立つかという、韓ドラ用語で言うところの「ケミ」というやつです。

IQ162の頭脳を持ち、社会性とはほど遠い傍若無人なキャラクター。「この人に手を出すやつらはみんなつぶす」と心に誓う強ヒロインを韓国版は本当に魅力的に演じていて、キム・ダミさん演じるチョ・イソとセロイのケミにくぎ付けになった人も多いのでは。この物語は彼女が自分の目標を達成するお話でもあり、変化と成長は大きな見どころ。平手さんのキャラ造形にもイソのような雰囲気を感じるので、竹内さんとの「ケミ」「超ケミ」「特級ケミ」を大いに発揮してほしいです。

テレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」制作発表記者会見で意気込みを語る平手友梨奈
テレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」制作発表記者会見で意気込みを語る平手友梨奈

ダブルヒロインとして主人公の幼なじみ、優香を演じる新木優子さんも、韓国版の雰囲気をつかんだキャスティングと感じます。主人公の初恋の人であり、敵対する両陣営の板挟みとなってみずみずしい存在感を発揮していく役どころ。竹内、新木、平手の三つどもえのケミが韓国版の迫力に迫れるか注目です。

一方、敵対する「長屋」サイドも手堅さ重視と感じます。

宿敵、長屋会長を演じる香川照之さんは今や“土下座といえばこの人”みたいな王道すぎるキャスティング。実際、物語は土下座をめぐるプライドの激突でもあるので、ネタ含みでSNS向きです。若者たちのベンチャーを権力でたたきつぶしていくヒールぶりは本家でも憎らしい限りですが、信念を曲げないという意味では主人公と似ている皮肉な存在。嫌悪感だけではない、ある種の覇王感にも期待です。

個人的に、「長屋」サイドの注目は、悪縁の発端となる御曹司の早乙女太一さん。無能ゆえ財閥で浮く小物、という韓ドラの得意キャラをどういう力加減で演じるのか興味があります。コンプレックスをこじらせた人格の悲しさ、しょーもなさを生き生きとお願いしたいです。

テレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」制作発表記者会見で。左から、竹内涼真、平手友梨奈
テレビ朝日系ドラマ「六本木クラス」制作発表記者会見で。左から、竹内涼真、平手友梨奈

韓国版は70分×16話ですが、日本版は54分×13話。「木曜ドラマ」枠では異例の長さを確保していますが、それでもオリジナルの約5~6話分をカットするわけで、どのシーンをカットし、日本版として再構築するのかも大きな見どころとなります。主人公を中心に、名ぜりふの宝庫がどうさく裂するのかも大きなポイントですし、名場面を彩る素晴らしい音楽の数々が日本版ではどうなるのかも気になります。

尺の長さや予算など、韓国版との規模の違いはあるにせよ、リメークする以上、脚本、演出、俳優陣が志を共有し、いい日本版になることを願わずにいられません。オリジナルは、今もNetflixの日本トップ10を快走中。両バージョンで作品のイズムに触れられる機会と受け止め、放送を待ちたいと思います。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

「梅チャンネル」Netflix版「梨泰院クラス」解説はコチラ>>